日本薬局方は、1886年にオランダ人教師ゲールツ博士らの協力を得て初版が公布され、89年には日本人の改正作業による「薬品営業並薬品取扱規則」、1948年には旧薬事法の公布と共に「国民医薬品集」が制定され、61年施行の薬事法(現薬機法)において第7改正が行われ、2部構成の薬局方となり現在に至っている。
森氏は、「常に日本の公的基準集として、医薬品の品質確保に重要な役割を果たしてきた」としつつ、「医薬品の生産技術など絶えず進歩しており、最新知見を取り入れていくたゆまぬ努力が必要」との考えを示した。今年の第17改正では、「製造要件」の項を医薬品条項に新設したほか、ICHガイドラインに基づく残留溶媒に関する規定が新設されるなど大きな見直しが行われた。
森氏は、医薬品の製造アウトソーシングの進展や生産技術の進歩、天然物や合成物に限らない医薬品の多様化といった環境変化を指摘。「変化に対応した規制の進化が求められる」とし、科学的知見を踏まえつつ時代の要請に合った薬局方への変化が必要とした。
その上で、第18改正に向け、標準品の検討体制を充実させることや不純物の管理に関する整備を行うこと、バイオ医薬品の品質保証の基本原則を整備することなどを課題に挙げると共に、日本発の医薬品の積極的な収載を要請。「日本の薬局方へさらに多くの収載を進めることで、薬局方を使いやすくしていくことは大事な方向性」と述べた。グローバル環境の中、海外でも利用してもらうため、18局に向けた作業で英文版を早期発行できるよう準備していく考えも示した。
森氏は、これまで薬局方が担ってきた品質確保の役割に変化が生じてきているとの見方を示し、レギュラトリーサイエンスに裏づけられた“ファーマコピア”への展開こそ日本薬局方の進むべき道ではないかと提言した。
また、国立医薬品食品衛生研究所の川西徹所長は、グローバル環境における日本薬局方の役割として、「直近では後発品の品質保証が重要になる」とし、「日本の後発品の品質管理に関する包括的なガイダンスになることが重要」との考えを示した。グローバリゼーションの視点で薬局方を有効に活用すべきとし、「そのために薬局方の参照基準については、きちんとしたシステムを確立していくことが必要」と述べた。