OCHの安全性と有効性を検証するため
慶應義塾大学は9月15日、クローン病に対する医薬品の候補であるOCH-NCNP1(OCH)の安全性と有効性を検証するための医師主導の治験を開始したと発表した。この研究は、同大学医学部内科学教室(消化器内科)の金井隆典教授、長沼誠専任講師らと、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)との共同研究によるもの。
クローン病は、10~30歳代に発症し、下痢、腹痛などの消化器症状の再発と回復を繰り返す慢性疾患。発症原因は不明だが、最近の研究により、食事などの環境因子が原因となり、さらに腸内細菌や食事などの腸管内抗原に対する過剰な免疫反応により腸に炎症を引き起こすことが考えられている。このような免疫過剰状態を是正するために多くの治療法が開発されているが、治療効果が得られても効果が減弱したり、副作用で薬剤が使用できない場合などがあり、新しい治療法の開発が望まれていた。
研究チームが開発を進めているOCHは、動物レベルで腸炎を抑制する効果を有し、炎症性サイトカインを抑制する効果を有することを明らかにしてきていた。NCNPの山村隆博士らは、クローン病と病気の原因が似ている神経難病患者に対する治験を開始しているが、クローン病はそれに続く治験となる。
16~70歳で、軽症から中等症の活動性を有する患者が対象
治験では、このOCHを約6週間にわたって3つのグループ(1グループ4人のクローン病患者)に反復投与する。同大学病院IBD(炎症性腸疾患)センターにおいて、2016年9月1日より開始された。
対象患者は、クローン病診断基準により同大学病院で診断された16~70歳のクローン病患者のうち、軽症から中等症の活動性を有する患者。活動性はCrohn’s Disease Activity Index(CDAI)という指標を用いて、CDAIが150から450までの患者が対象となる。また、副作用発現の観点より患者の安全を確保するために、現在患者が行っている治療法のうち、インフリキシマブやアダリムマブを使用している患者は治験中、一定期間の休薬期間が必要となる。
今後は、同治験の結果によってさらに大規模な治験を行うことで、薬事承認をめざす。研究グループは、OCHを抗TNFα抗体製剤を使用する前の治療薬、抗TNFα抗体製剤が効果減弱した際の治療薬として使用したいとしている。
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・慶應義塾大学 プレスリリース