Rubiconとオートファジーや細胞死との関連調査
大阪大学は9月13日、肝臓で、オートファジーを抑制するタンパク質「Rubicon」の発現が上昇することが脂肪肝の原因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科消化器内科学の田中聡司大学院生、疋田隼人助教、竹原徹郎教授、および同大大学院医学系研究科遺伝学/生命機能研究科細胞内膜動態学の吉森保教授らの研究グループによるもの。研究成果は、9月下旬以降に米科学誌「Hepatology」にオンライン公開される予定。
画像はリリースより
過度の栄養が原因となる脂肪肝は、日本を含めた先進国で増加しており、人口の約30%が脂肪肝に罹患すると推計されている。また、脂肪肝の一部は非アルコール性脂肪肝炎を経て重症化し、肝硬変、肝がんへと進行するため、脂肪肝の増悪をいかに抑制するかが課題とされている。しかし現時点では、脂肪肝を治療するための有効な薬剤は存在していない。これまで脂肪肝では、オートファジーが抑制されていることが報告されていたが、その詳細については解明されていなかった。
そこで、研究グループはRubiconに注目し、脂肪を与えたヒト培養肝細胞や、過栄養状態で脂肪肝を発生したマウス体内の肝細胞において、Rubiconとオートファジーや細胞死(アポトーシス)との関連を調べた。
非アルコール性脂肪肝炎や肝がんの発症抑制に期待
その結果、脂肪を与えたヒト培養肝細胞(HepG2:ヒト肝がん由来細胞)や、高脂肪食(32%脂肪含有、4か月)を与えたマウスの肝細胞では、Rubiconの発現が上昇してオートファジーが抑制されることを見出した。また、このRubiconの発現を抑える(ノックアウトする)ことにより、マウス肝臓内の脂肪蓄積と細胞死が軽減され、脂肪肝の増悪はRubiconの発現上昇を介したオートファジー機能の低下が原因で起こっていることを明らかにした。また、非アルコール性脂肪肝炎の患者の肝臓内でもRubiconの発現が上昇していること確認したとしている。
今回の研究成果により、脂肪肝に対して、Rubiconを標的として、患者の肝内脂肪を減少させ、肝障害を軽減させる治療薬の開発が期待される。さらに、これにより脂肪肝から重症化する非アルコール性脂肪肝炎や肝がんの発症を抑制することも期待される、と研究グループは述べている。
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