光リソグラフィー技術をもとに組織を迅速に再生する方法を開発
東京医科歯科大学は9月13日、光リソグラフィー技術をもとに、ガラス基板上の細胞を無細胞化した羊膜上に転写し、その細胞上に異なる種類の細胞を積層して培養し、マウス骨欠損モデルにおける欠損部に移植することで、組織を迅速に再生する方法の開発に成功したと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学大学院医歯学総合研究科寄附講座ナノメディスン(DNP)講座の岩崎剣吾講師、森田育男理事の研究グループが、同大学生体材料工学研究所物質医工学分野、大日本印刷株式会社との共同で行ったもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版に9月14日付け掲載されている。
病気の進行や事故で失われた体の組織を再生させることは非常に難しく、最近では体の外で培養した細胞を移植して組織を再生させる治療法の開発が期待されている。研究グループは、マイクロメートル単位の微細な模様の印刷を可能にするにしている光リソグラフィー技術に注目し、この技術を細胞移植材料の作成に応用した。
血管再生や歯周病治療など再生医療への応用に期待
今回の研究では、これまで単一の細胞のみで可能であった技術を改良し、印刷技術によるインクの多色刷りを細胞に応用して、複数の異なる細胞を積層する方法を開発。このように細胞を多層に積層した生体材料(無細胞化羊膜)は、折り曲げたり、引っ張ったり、切り抜いたり、さらには形状を変化させることも可能で、生体材料に印刷された細胞は安定して保たれるとしている。
この細胞を多層に積層した生体材料の、組織再生への寄与能力を調べるために、増殖能と分化能を有する間葉系幹細胞と骨を作るもとになる骨芽細胞を多層化し、マウスの骨欠損部に移植した。骨を取り除いた穴の上へ幹細胞と骨を作る細胞の2つを印刷した材料を移植したところ、骨の再生が増強される結果が観察されたとしている。
今回開発された方法によって、複数の細胞種が積層された生体に近い構造を持った細胞移植材料の作成が可能となった。この方法で作った材料は、移植手術の際に起こる材料の変形などに耐え、さらに移植材料を引っ張ったり、折りたたんだり、トリミングしたりすることも可能であることから、細胞移植治療を簡単に、確実に行うことができるようになると推測される。今後、血管内皮細胞+平滑筋細胞で血管再建や、歯根膜細胞+骨芽細胞で歯周病治療など、多くの再生医療への応用を期待したい、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東京医科歯科大学 プレスリリース