ベンゾジアゼピン系薬剤の人口当たり処方量、米国の6倍
サスメド株式会社とDeSCヘルスケア株式会社は9月12日、不眠治療用スマートフォンアプリの企画・開発について業務提携契約を締結したと発表した。スマートフォンアプリの将来的な医療機器としての認可を目指して、神経研究所附属晴和病院、芳和会くわみず病院と連携し、今月から臨床試験を開始する予定。これは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の起業家候補(スタートアップイノベーター)支援事業を活用したもの。
画像はリリースより
日本人の5人中1人に睡眠障害の疑いがあり、睡眠障害による日本の経済損失は年間3.5兆円に上ると試算されている。不眠症は、抑うつ症状などの精神疾患や、高血圧症、糖尿病のリスク因子となることが知られており、適切な不眠症治療とその予防は種々の疾患リスクを抑えるとともに、経済的観点からも生産性向上を考える上で重要な課題とされている。
不眠症に対する治療法としては、米国国立衛生研究所の指針では認知行動療法が第一選択とされ、安易な睡眠薬の処方は依存形成などの副作用につながるため控えるように警鐘が鳴らされている。一方、日本における睡眠薬の処方量は先進国の中で群を抜いて多く、睡眠薬として用いられるベンゾジアゼピン系薬剤の人口当たりの処方量は米国の約6倍に上ることが国連の国際麻薬統制委員会から指摘されてきた。厚生労働省も2014年度からベンゾジアゼピン系薬剤の多剤処方時の診療報酬を改定し、処方減に取り組んでいる。薬剤に依存しない不眠症の治療法の普及は、疾病リスクの低減や生産性向上につながるとともに、治療法の選択肢を広げる効果が期待されている。
睡眠改善効果の検証へ、不眠症治療での利用目指す
NEDOは、将来のメガベンチャーを創出することを目的に、研究開発型ベンチャーの起業家候補支援事業を実施している。この事業において、日本の睡眠薬の使用量が諸外国に比べて多いという問題意識のもと、サスメド株式会社とDeSCヘルスケア株式会社が共同で、非薬物療法である認知行動療法のアルゴリズムを用いたスマートフォンアプリの開発を行い、その睡眠改善効果を検証する。サスメドは主にアプリ全体の製品企画と医学的知見の活用を担い、DeSCヘルスケアはユーザーインターフェースおよびプログラムの開発を担当するとしている。
さらに、サスメドでは、治療用ソフトウェアを医療機器として製造販売するために必要な申請手続きを行い、将来的に同アプリが医療機器として不眠症治療に利用されることを目指していく。