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PAH患者、リオシグアトへの切り替えが効果的-バイエル

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2016年09月13日 PM12:00

PDE-5阻害薬で十分な反応が得られない場合に

ドイツのバイエル社は9月4日、非盲検、非対照、多施設、単一群第3b相パイロット試験RESPITEの全データ成績を発表した。同試験は、)の単剤治療またはエンドセリン受容体拮抗薬との併用治療で十分な反応が得られない肺動脈性肺高血圧症()の患者を対象に、リオシグアトの臨床効果を評価したもの。この試験成績は、ロンドンで開催された国際会議、欧州呼吸器学会(ERS)において口頭発表された。

5種類ある肺高血圧症(PH)のうちのひとつであるPAHは、血管収縮により肺動脈圧が大きく上昇し、右心不全や死に至る可能性がある進行性の疾患。この10年にわたり、すでにいくつかの治療方法が提供されているにもかかわらず、PAH患者の予後は依然として不良であり、効果的な別の治療選択肢が必要とされている。死亡率は現在でも依然として高く、診断から1年で15%、3年で32%となっている。

リオシグアトは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれる新しいクラスの薬剤で、PHにおける重要な分子メカニズムをターゲットとした経口治療薬として、バイエルが発見、開発した。2013年10月、米国において手術不適応の慢性血栓塞栓性肺高血圧症()、外科的治療後に持続・再発がみられたCTEPH並びにPAHに対して「アデムパス(R)」の販売名で承認。欧州及び米国では、希少疾病用医薬品指定を受け、2014年3月、欧州医薬品庁(EMA)により外科的治療不適応または外科的治療後に持続・再発したCTEPH、PAHの治療薬として「アデムパス錠」の販売名で承認された。また、2014年1月、日本において希少疾病用医薬品指定を受け、外科的治療不適応または外科的治療後に持続・再発したCTEPHを適応として承認され、2015年2月にPAHを適応として承認されている。

薬剤との因果関係ありとされる死亡例はなし

今回結果が公表されたRESPITEは、PDE-5阻害薬(sildenafilまたはtadalafil)による治療で十分な反応が得られない、すなわちWHO機能分類(FC)がIII度、6MWDが 165~440mでかつ心係数が3.0L/min/m2未満のPAH患者61例に、リオシグアトを24週間投与するパイロット試験。薬剤変更時の1~3日間の休薬期間を経て、患者はリオシグアト治療を開始し、8週間の用量調節期間で投与量(最高2.5mgTID)を調整し、その後に16週間の用量維持期間が続いた。この探索的試験での評価項目は6MWD、WH OFC、臨床的悪化、肺血行動態、生活の質、その他の疾患関連パラメーターや一酸化窒素経路関連バイオマーカーの変化、および安全性。

その結果、24週時にリオシグアト治療を継続していた患者(84%, n=51)の6MWDは平均で31m延長。患者の52%(n=52)はWHO FC II度であり、2%はWHO FC I度(n=52)であった。さらに、NT-proBNP(心不全の血清マーカー)の平均値はスクリーニング時のベースライン値から347pg/mL(n=52)低下。これらのことから、PDE-5阻害薬で十分な反応が得られない肺動脈性肺高血圧症の患者には、リオシグアトへの切り替えが効果的と考えられることが判明したとしている。

また、2例の死亡を含む、6例の患者(10%)に臨床的悪化イベントが認められた。薬剤との因果関係ありとされる死亡例はなかった。10例(16%)の患者が試験を中止。患者の10%超で発現し、最も多く報告された有害事象は、消化不良、頭痛、下痢、めまい、低血圧、鼻咽頭炎、嘔吐、末梢性浮腫、右心室不全だった。

なお、リオシグアトの開発と販売は、sGCモジュレーター領域におけるバイエルとMSD(米国とカナダではメルク社、関連会社を含む)との全世界での戦略的業務提携の一環。両社は今回の試験成績を、今後の臨床研究実施の根拠として利用していくとしている。

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