炎症性サイトカインの産生を抑え、抗炎症効果を発揮
大阪大学は9月8日、サリドマイドの抗炎症作用メカニズムを解明することに成功したと発表した。この研究は、同大学免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国の科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Science of the USA(PNAS)」に9月6日付けでオンライン掲載されている。
画像はリリースより
サリドマイドは、細胞内のセレブロンというタンパク質に結合して骨髄腫細胞に抗腫瘍効果を発揮することが知られている。一方で、インターフェロンやIL-6、TNFなどの炎症性サイトカインの産生を抑えて、抗炎症効果を発揮することも知られていた。
IL-6は、同大学の岸本忠三研究室で発見された代表的な炎症性サイトカインで、特に関節リウマチの原因として有名であり、そのブロック剤は広く世界で治療薬として使われている。TNFは、がん細胞を攻撃する炎症性サイトカイン。ただし、TNFが作られすぎるとリウマチなど炎症性自己免疫疾患を引き起こすとされている。
リウマチなど炎症性疾患への応用に期待
研究グループは、IL-6などの産生にかかわるRabex-5というタンパク質がセレブロンに結合しており、この結合をサリドマイド誘導体がブロックしてRabex-5を遊離させること、遊離されたRabex-5はインターフェロン遺伝子の阻害剤として働き、結果的に炎症の抑制効果を発揮することがわかったとしている。
今後、サリドマイド分子をリウマチなどの炎症性疾患にいかに応用するかを考えるきっかけになることが期待されると、研究グループは述べている。
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