抗がん剤耐性となったヒト肺がん細胞がIL-34を産生
北海道大学は9月7日、抗がん剤耐性となったヒト肺がん細胞が、インターロイキン-34(IL-34)を新たに産生するようになることを発見したと発表した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所免疫生物分野の清野研一郎教授ら研究チームによるもの。研究成果は「Cancer research」オンライン版に8月22日付けで掲載されている。
画像はリリースより
がんに対する治療法の中でも化学療法は重要な柱のひとつとなっている。近年では免疫チェックポイント分子を標的とする抗体療法などが開発され、大きな治療効果をあげているが、抗がん剤耐性となったがんの治療は依然として難しく、抗がん剤耐性獲得のメカニズムの解明や新規治療法の開発が望まれている。
IL-34阻害により抗がん剤耐性がんに対しても奏功
研究グループは、ヒト肺がん細胞A549をモデルとし、ドキソルビシン感受性A549 細胞(A549-DS)を抗がん剤(ドキソルビシン)の存在下で培養を続けることで、ドキソルビシン耐性A549細胞(A549-DR)を作製。A549-DSに比べ、A549-DRで発現の高まっている免疫関連因子についてスクリーニングを行った結果、近年発見されたサイトカインであるIL-34が特徴的に高く産生されていることを発見した。IL-34は、免疫抑制型の腫瘍随伴マクロファージを誘導し、さらにがん細胞自身の生存維持を助けることで、結果的にがん細胞の抗がん剤耐性を高めていることを見出したという。
また、抗がん剤耐性がん細胞のIL-34産生を止めるように操作すると、抗がん剤治療が効くようになり、腫瘍増大を顕著に抑えられることも明らかになったという。これらの結果は、抗がん剤耐性がん細胞が産生するIL-34が免疫抑制的な腫瘍微小環境の形成を促進していること、さらにがん細胞自身の抗がん剤耐性を高めるのに寄与していることを示すものとなる。
これら研究成果により、IL-34の働きを阻害することで、抗がん剤耐性がん細胞がつくりだす免疫抑制状態を解除し、免疫系を標的とした治療の効果を高められる可能性や、抗がん剤との併用療法により抗がん剤耐性となったがんに対しても治療効果を発揮する可能性が予測される。これまで根治の難しかった抗がん剤耐性がんに対するIL-34を標的とした新規治療法の開発につながることが期待される、と同研究グループは述べている。
▼関連リンク
・北海道大学 プレスリリース