世界における推定患者数約10,000人の希少な神経変性疾患
米国のファイザー社は8月8日、軽度のトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)患者を対象とした「ビンダケル」(一般名:タファミジスメグルミン)の3本の試験について、データの事後解析結果が「Amyloid:The Journal of Protein Folding Disorders」に掲載されたことを発表した。
TTR-FAPは、QOLを大きく損なう不可逆かつ進行性の希少な遺伝性神経変性疾患。世界における推定患者数は、約10,000人とされている。治療せずに放置すると、症状の発現から平均10年以内に死亡する疾患だ。この病気は、トランスサイレチン(TTR)と呼ばれるタンパク質の遺伝子変異によって引き起こされるもので、不安定なTTRタンパク質が生成され、アミロイドとして神経やその他の器官に蓄積し、正常な機能を阻害してしまう。
ビンダケルは、TTRを特異的に安定化するよう設計された医薬品。異常なTTRタンパク質の生成、およびその後のアミロイドの蓄積を抑制または遅延するという。TTR-FAP治療薬として2011年にEUで承認を取得して以来、日本、メキシコ、アルゼンチン、イスラエル、韓国でも承認。なお、米国では承認されていない。
神経変性の進行が最小限に抑制され、体重が維持
今回報告された新たな結果は、TTR-FAP患者125例を対象とした18か月間の無作為化二重盲検プラセボ対照第3相ピボタル試験、その試験の12か月間の非盲検延長試験、および進行中の2度目の非盲検長期延長試験という3件の連続的研究のデータに基づいている。
この記述的分析では、ビンダケルの投与を開始する直前、すなわち、ビンダケル群に無作為化された患者の場合は試験開始時点、プラセボ群に無作為化された患者の場合は最初の非盲検延長試験への登録時に、神経障害が軽度と判断された71例のサブセットについて調査を実施。5.5年目の時点で観察された31例の評価により、ビンダケルを投与することによって神経疾患の進行が最小限に抑制されたことが明らかになったという。ベースラインからの平均変化は5.3NIS-LLポイントだった。これは、年間1.0ポイントのNIS-LL上昇を意味するという。
TTR-FAPは、一般に消化器系の問題を伴うため、栄養不良になって、意図せず体重が減少し、その結果、疾病進行の臨床指標である修正BMI指数(mBMI)が低下する。今回掲載された分析では、ビンダケルの長期投与によってmBMIが維持され、5.5年目の時点でベースラインからの減少が1%未満であることが明らかになったという。また、これら長期的評価において、新たな安全性の問題や副作用は認められなかった。
これらの結果は、症候性TTR-FAPの患者にビンダケルで早期介入することの長期的ベネフィットを裏付けるものだ、とファイザー社は述べている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース