受動喫煙で肺がんリスクは約1.3倍に
国立がん研究センターは8月31日、日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究の結果を公表した。この研究では、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であることが示された。研究成果は学術誌「Japanese Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。
画像はリリースより
能動喫煙と肺がんの関連については、多くの調査、研究によりリスク要因として確実であることが明らかで、日本では肺がんの死亡のうち、男性で70%、女性で20%は喫煙が原因と考えられている。また、肺がん以外のがんとの関連も明らかで、がんの死亡のうち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられている。
受動喫煙と肺がんの関連については、1981年に平山雄国立がんセンター研究所疫学部長(当時)が世界で初めて報告。2004年には、国際がん研究機関(IARC)が環境のたばこ煙の発がん性を認めるに至っている。日本人を対象とした研究もこれまでに多数発表されており、同センターによる多目的コホート研究からも報告されているが、肺がん全体に関して個々の研究では統計学的に有意な結果が得られず、日本人を対象とした科学的根拠に基づくリスク評価が「ほぼ確実」にとどまっていた。
ガイドラインでも「できるだけ避ける」から「避ける」へ文言修正
今回の研究では、日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんの関連を報告した426本の研究のうち、適用基準を満たした9本の論文結果に基づきメタアナリシスを行った。その結果、日本人を対象とした疫学研究のメタアナリシスにおいて、受動喫煙と肺がんとの間に統計学的に有意な関連が認められた。受動喫煙による相対リスクは約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様。研究デザイン、出版年、交絡因子の調整有無によって層別してもほぼ同じ結果であった。出版バイアスは統計学的に有意ではなく、出版バイアスを補完しても結果は変わらなかったという。
今回の研究結果を踏まえ、同センター社会と健康研究センターを中心とする研究班は、受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードした。これに伴い、日本人の実情に合わせ喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の6項目でがん予防法を提示しているガイドライン「日本人のためのがん予防法」においても、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から“できるだけ”を削除し「避ける」へ文言の修正を行い、受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標として提示した。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース