ICGを用いた蛍光法、乳癌診療GLで推奨グレードBに
株式会社島津製作所は8月29日、薬剤ICG(インドシアニングリーン)を励起して発生させた近赤外蛍光を撮影することでリンパ管を可視化し、乳がんの手術における転移診断を支援する近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」(ライトビジョン)を発売した。
画像はリリースより
乳がんの手術においてがん細胞の転移を診断するには、直径数mmのセンチネルリンパ節の位置を同定し、切除して病理診断する必要がある。センチネルリンパ節への転移がなければ、腋窩リンパ節の切除を省略してリンパ浮腫を防ぐことができ、術後の患者QOLの維持につながる。そのため執刀医は、リンパ節の位置を正確に把握し、迅速に手術を進めたいと考えている。
このようなセンチネルリンパ節の生検において、ICGを用いた蛍光法は近年注目されつつある。日本乳癌学会が定める乳癌診療ガイドラインでも、2015年は推奨グレードBに登録されるなど、科学的根拠があり、実践するよう推奨されている。
LIGHTVISIONの応用で血管の造影にも
同社は、長年にわたって光制御技術や生体組織の蛍光イメージング技術に取り組んでいる。これらの技術を医用画像診断分野に結びつけることで、乳がんの手術を始めとする臨床分野に応用できると考え、近赤外光カメラシステムの開発を進めてLIGHTVISIONとして製品化した。
リンパ管に投与された薬剤ICGにLIGHTVISIONから励起光を照射し、ICGから発生した肉眼では見えない微弱な近赤外光を撮影して画像化することで、組織表面下のリンパ管をリアルタイムで造影できる。手術中にリンパ管を“見える化”することで、執刀医は、切除するリンパ節の位置などをモニタで確認しながら手技を進めることが可能になる。乳がん手術では、がん細胞の転移を診断するために重要なセンチネルリンパ節の位置同定に有効とされている。
同社は、病気の早期診断や検査、治療、予後管理などへのトータルな貢献を目指しており、今後はLIGHTVISIONの応用による血管の造影にも取り組んでいくとしている。
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