まずは任意団体としてスタートし、法人化を目指す。同学会の運営は、薬系大学教員に加え、日本薬剤師会や日本病院薬剤師会の関係者ら11人で構成される世話人会が担当。代表世話人には乾賢一氏(京都薬科大学名誉教授)が就任する。
個人会員、学生会員、賛助会員など会員の募集を既に開始しており、当初は約350人の会員数で発足。薬系大学教員だけでなく薬剤師や学生、企業の教育研修担当者など幅広い関係者の参加を想定しており、将来的には会員数1000人規模の学会に発展させたいという。
薬学教育6年制が2006年度から始まり、薬学共用試験、長期実務実習、薬学教育第三者評価など新たな取り組みが実施されてきた。15年度からは改訂薬学教育モデル・コアカリキュラムに準拠した新カリキュラムが各大学で始まった。このような薬学教育改革の成果を検証し、改革や充実を推進するには科学的なアプローチが求められるとして学会設立に至った。
学会の設立によって、薬学教育そのものを研究対象とし、その改善を図る動きを全国の薬系大学に広げたい考え。その教育手法によって学生にどのような教育効果があったのかを検証し、不十分なところを改善したり、さらに改良を加えたりするサイクルを繰り返せば、薬学教育はより良いものになっていく。また、基礎系の研究手法が中心だった薬学において、教育効果を評価する方法はほとんど確立されていないとして、他分野での取り組みを参考にその確立を後押しする。
他の医療人教育分野では既に日本医学教育学会、日本歯科医学教育学会、日本看護学教育学会など分野ごとに学会が設立されている。薬学においては関係者が薬学教育の取り組みを発表し、共有する場は関連学会に分散していたが、今回の学会設立によって共通の土台が出来上がる。
学会設立に向けてこれまで、まずは私立薬科大学協会を中心に設立準備委員会が発足。関係団体の意見を幅広く集約するため昨年、10団体で構成される設立準備連絡会議が全国薬科大学長・薬学部長会議のもとに設立され、オブザーバーとして文部科学省と厚生労働省などが加わった。その下部組織として設立準備委員会が位置づけられ、具体的な検討が進められてきた。
26日に京都薬大で開いた記者会見で乾氏は、病院薬剤師や薬局薬剤師の業務内容は幅広く深くなっていると言及。日本薬学教育学会に求められる役割として「6年制薬学教育の教育改革や均てん化を図り、充実、発展させなければならない。医学や看護学の教育と見合うように薬学教育の中身を充実させる必要がある」などと語った。