禁酒で食道がんの再発抑制に
京都大学は8月25日、食道扁平上皮がんの発生する予兆(前がん病変)とされる異型上皮の発生程度には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜の摂取という3点が関連していることを明らかにしたと発表した。また、内視鏡治療を行った早期食道がん患者では、食道内の異型上皮の数が多いほど、食道内やのどの異時性多発がんの危険性が増すこと、加えて、禁酒によって食道がんの再発を抑制できることを世界で初めて発見したとしている。この研究は、同大学医学研究科の武藤学教授らの研究グループによるもので、研究成果は、「Gastroenterology」に8月1日付けで掲載されている。
画像はリリースより
食道がんには、過度な飲酒が主な原因とされる扁平上皮がんと、胃酸逆流が関連するバレット腺がんの2つのタイプがあるが、扁平上皮がんは日本人の食道がんの約90%を占めている。また、食道扁平上皮がんは食道内でのがん多発や頭頸部の扁平上皮がんの合併をひき起こすFiled cancerization現象(広域発がん現象)をもたらし、治療後に別の部位でがんが再発するため予後をさらに悪化させる。
食道扁平上皮がんは、前がん病変とされる異型上皮から発生すると考えられているが、これまで異型上皮の程度と食道がん発生、そしてFiled cancerization現象との関連性はわかっていなかった。がんの原因とされる飲酒をやめた場合の効果も、十分な検証がされていなかった。
根治期待できる食道がん患者、治療後の生活指導が重要
そこで、研究グループは、内視鏡治療をした早期食道がん患者330人に協力を依頼し、治療後の経過中にどのくらいの期間で、どのくらいの割合で、食道がんや頭頸部のがんが発生するかを見る追跡調査を実施した。また、全員に禁酒および禁煙指導を行い、禁酒・禁煙による発がん抑制効果も検討。さらに、食道内の異型上皮の程度をgradeA~Cに分類し、異時性がんの発生を観察した。
その結果、
- 前がん病変とされる異型上皮の発生には、飲酒、喫煙、緑黄色野菜を食べない、やせが関連する
- 食道内に多発性の異型上皮があると、食道内多発がん、頭頸部がんの発生が高くなる
- 禁酒をすると、異時性の食道がん発生を約半分に減少させることができる。特に、食道内に多発性の異型上皮がある患者では4分の1に減少させることができる。一方、禁煙の短期的な効果は期待できなかった
ことが明らかになったとしている。
これらは、根治が期待できる食道がん患者の治療後の生活指導の重要性を示している。今後は経過観察をさらに延ばすことで、他の臓器のがんの発生や今回確認できなかった禁煙の効果などを見ていく予定と、研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果