「HLAホモ接合体」の細胞有する健康なドナーから作製
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は8月24日、さい帯血から作製した再生医療に使用可能なiPS細胞ストックの提供を開始したと発表した。
CiRAでは、再生医療実現拠点ネットワークプログラムの一環として、2013年度より再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを本格的に進めている。昨年8月には末梢血から作製したiPS細胞ストックの提供を開始した。
同プロジェクトは、「HLAホモ接合体」の細胞を有する健康なドナーからiPS細胞を作製し、あらかじめさまざまな品質評価を行ったうえで、再生医療に使用可能と判断できるiPS細胞株を保存する取り組み。iPS細胞株は、CiRA内の細胞調製施設 FiT(Facility for iPS Cell Therapy)で作製している。
2017年度末までに日本人の3〜5割程度をカバー
今回提供を開始したさい帯血由来のiPS細胞株は、日本人において最も高頻度にみられるHLA型(昨年提供した末梢血由来のiPS細胞と同じHLA型)の細胞から作製した。このiPS細胞から作製した分化細胞は、日本人の約17%に免疫反応が少なく、移植可能と考えられている。
CiRAは2015年から、複数のiPS細胞株について分化能力の評価やさまざまな項目の品質評価を行った。実際に分化細胞(治療の際に移植する細胞)を作製する研究機関で、末梢血由来iPS細胞とさい帯血由来iPS細胞を比較し、目的とする分化細胞に適したiPS細胞ストックを選択することで、より安全な再生医療が提供されることが期待される。
引き続き、日本人で頻度の高いHLAホモ接合体を有するドナーの協力を仰ぎながら、第一段階として2017年度末までに日本人の3~5割程度をカバーできる再生医療用iPS細胞ストックの構築を目指し、iPS細胞の製造に取り組んでいくとしている。
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・京都大学iPS細胞研究所 研究活動