■業界は「革新」観点訴え
厚生労働省は24日、抗癌剤「オプジーボ」など高額薬剤の問題について、薬価に関する緊急的な対応案を10月にまとめる方針を中央社会保険医療協議会薬価専門部会に示し、高額薬剤をめぐる議論が本格的に始まった。「オプジーボ」を想定し、今年度の市場規模が突出した品目の薬価を見直す方向だが、委員からは類似薬効比較方式、原価計算方式で算定する現行の薬価制度全般を見直すよう求める意見が相次いだ。来年3月には、薬価制度を含めた次期改定への取り組みを中間的にまとめる予定。
厚労省は、高額薬剤問題について、当面は薬価に関する緊急対応と最適使用推進の取り扱いをまとめる方針を提示。この日の専門部会では、まず緊急的に対応する薬剤の対象範囲、その場合の薬価算定根拠、最適使用推進ガイドラインの医療保険制度上の取り扱いについて議論を行った。
対象範囲については、過去10年間に薬価収載された品目で昨年10月から今年3月に効能変化があった既収載品15品目のうち「オプジーボ」を想定。今年度薬価改定で再算定の検討が間に合わず、昨年度末までに効能追加され、効能拡大により市場規模が極めて突出した薬剤として、今年度の市場規模が当初予測の10倍かつ売上高1000億円以上を見直し対象とする提案がなされた。
また、最適使用推進指針の医療保険制度上の取り扱いについては、薬価収載時に指針を踏まえた内容を留意事項通知に記載する方向性が示され、節度ある使用につながるとして賛同する意見が多かった。
ただ、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「C型肝炎治療薬のソバルディとハーボニーは、類似薬の比較対象に生物製剤のインターフェロンが含まれたため、低分子薬にもかかわらず、薬価が高すぎる結果になった。これは納得できない」と強調。「高額薬剤の問題が起こってきたのは、類似薬効比較方式、原価計算方式という現行制度が最たる原因」と主張し、薬価制度全般の見直しを求めた。厚労省保険局の中山智紀薬剤管理官も「議論する必要はある」と応じた。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、薬価制度全般の見直しに賛同しつつ、緊急対応について「どれだけ市場規模が拡大したかの割合に応じて(薬価の)改定率を決める方法もある」と提言。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「特例再算定をオプジーボに適用するのも一案」とした上で、今後の薬価制度改革論議については、原価計算方式における営業利益率のあり方に問題意識を示した。
一方、業界代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬常務執行役員)は、「議論の対象となっている高額薬剤は、患者が待ち望んでいる革新的な薬剤であり、そこに製薬企業の使命があることを理解してほしい」と要請。「オプジーボも日本発の新薬で、国内企業が世界に先駆けて上市したまさに革新的な新薬と認識しており、効能追加した企業があたかも悪者のようになっているのは極めて残念。革新的という観点で議論してほしい」と訴えた。
さらに、“当面の対応”の考え方について、中川委員は「期中改定ありきでは賛成できない」との立場を強調したのに対し、幸野委員は「効能追加がなくても再算定まで2年を待たずに期中改定があり得ることも検討すべき」と主張した。
今後、次回の専門部会で製薬業界から意見聴取を行う。また、来月には、最適使用推進指針の策定経過も報告される予定。