■県、上田市の財政支援がカギ
新潟薬科大学(寺田弘学長)が長野県上田市で2018年4月の開設を目指している「長野薬学部」(仮称)の設置準備室長で薬学部(臨床薬物治療)教授の若林広行氏は、新学部を設置する目的について、「薬学部がない長野県の薬剤師養成と域内全体の高度医療人育成を支援するため」と説明した。設置にかかるコスト70~80億円のうち、「われわれが望む金額を支援いただけるなら、18年2月には校舎の一部を完成させ、同年4月に開学する」とする一方で、希望額が提示されなかった場合には、「経営判断として、撤退することになるだろう」と明言した。薬学部設置の可否は今年10月に開かれる新潟科学技術学園の理事会で最終判断することになっているが、同学園は新潟工業短期大学と新潟医療技術専門学校も設置しており、安定的に長野新学部を運営するためにも長野県と上田市からどの程度の財政支援が得られるかがカギになりそうだ。
新キャンパスは、北陸新幹線や在来線2線が乗り入れる上田駅から徒歩1分の旧イトーヨーカ堂上田店跡地への建設を計画している。交通アクセスに優れていること、長野県内の複数の自治体から薬学部設置の打診を受けた中から総合的に判断し、建設地として選択した。
若林氏によると、長野薬学部の開設は、地元からの要請を受けたもの。長野県内には薬学部がないため、毎年、200人弱の学生が県外の薬学部に進学しているのが実情だ。その一方、卒業後に長野県に戻ってくる学生は10人弱にとどまっており、医療現場に薬剤師が足りていないのが現状だという。
そのため、以前から長野県には「県内に薬学部を誘致したいとの思いがあった」といい、「隣の新潟県で40年の薬剤師養成の実績があり、長野県出身の卒業生がおよそ300人に上り、毎年、長野県から平均10人ほどの学生が入学する」(若林氏)同大学に、誘致の申し入れがあった。
高齢化が進む長野県では、チーム医療の充実が必要とされており、他の医療関係団体からも、医師、看護師だけではなく、薬剤師の養成も行ってもらいたいとの要望があった。現に、長野県は薬学部誘致のため、今年5月に決定した「長野県高等教育振興基本方針」の中で「薬剤師養成施設」の設置検討を盛り込んでいる。
新潟薬大が1年半ほどかけて薬学部設置の可否を調査し、実現可能性を探ったところ、「1学年100人、6学年で600人ほどの規模であれば、新潟県本体の経営と両立しながら、長野県の地域医療に貢献する意欲を持った学生を養成できる、という結論に至った」という。
新学部では、臨床の現場をより理解し、応用力を兼ね備えた薬剤師の育成を、周辺の医療系大学と連携して取り組むこととしており、海外提携大学との交流や卒業後の薬剤師生涯学習の充実など、一貫した医療人教育を実践するフィールドとしたい考え。
新キャンパスは、現在の計画では2棟構成で5階建てになるという。
既に新潟薬大では、上田市に薬学部を設置する基本計画を決定しており、設置されれば、県内初の薬剤師養成機関が誕生する。