増幅過程に偏り生じず、解析時にも偏りが生じない解析技術望まれる
北海道大学は8月19日、世界で初めて、ナノ流体回折格子でDNAの増幅過程を無標識検出し、結核菌やヒトパピローマウイルスの超高感度診断を可能にしたと発表した。この研究は、名古屋大学大学院工学研究科の馬場嘉信教授、安井隆雄助教の研究グループが、北海道大学大学院工学研究院応用化学部門の渡慶次学教授のグループ、ストックホルム大学生命科学研究所のマッツ・ニルソン教授のグループらと共同で行ったもの。研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に8月17日付けで公開されている。
画像はリリースより
DNA増幅過程の検出は、基礎生医学や分子生物学にとって欠かすことのできない重要な科学技術。しかし、現在までに開発されてきた解析技術では、DNAを直接観察することができないため、蛍光分子などを介したDNAの間接観察を行ってきた。この間接的な解析技術は、解析したDNAによって蛍光分子の結合し易さなどにより、解析結果に偏りが生じるという問題を抱えていた。また、DNA増幅の手法も、DNAの配列によって増幅過程に偏りが生じるという問題があった。従って、増幅過程に偏りが生じず、かつ、蛍光分子による解析時にも偏りが生じない、解析技術の開発が強く望まれていた。
結核菌やヒトパピローマウイルスのDNAを2分で検出
今回の研究では、ナノ流体回折格子を開発。このナノ流体中でDNA増幅を行うことで、その増幅過程を無標識で検出できることを発見し、DNA増幅過程を世界で初めて直接観察した。また、DNA増幅も従来用いられてきたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とは異なる circle-to-circle amplification(C2CA)という手法を用いることで、増幅時に偏りが生じる問題を解決した。また、この解析技術を用いることで、超微量の結核菌やヒトパピローマウイルスのDNAをわずか2分で検出することに成功したとしている。
今後、この技術を展開することによって、超微量の病原菌や病原性ウイルスを簡便に検出することが可能となり、人々の安心・安全を見守る科学技術へと発展することが期待される。同技術を基礎生医学や分子生物学へと展開することによって、それら学問のさらなる飛躍へと貢献することが期待されると、研究グループは述べている。
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