これまでに神経障害性疼痛の原因でP2X4受容体が重要と発表
九州大学は8月19日、脊髄後角神経にあるVNUTがアデノシン三リン酸(ATP)の放出と神経障害性疼痛に関与することを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院薬学研究院の増田隆博助教、津田誠教授、井上和秀理事・副学長らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に8月1日付けで発表された。
画像はリリースより
研究グループはこれまでに、神経のダメージで発症する慢性的な痛み(神経障害性疼痛)の原因として、ミクログリアという細胞で増えるP2X4受容体が重要であることを発表していた。この受容体は細胞外にある物質、ATPで刺激されるが、ATPがどの細胞からどのような仕組みで細胞外へ放出されるのかはわかっていなかった。
VNUT作り出せないマウスでATPの放出と神経損傷後の痛み弱く
今回、研究グループはATPの放出に関わるタンパク質「VNUT」に注目して研究を行った。実際に、脊髄後角神経のVNUTを作り出せないように遺伝子を操作したマウスでは、ATPの放出と、神経損傷後の痛みが弱くなっていたとしている。
この研究成果は、同研究グループが2003年に神経障害性疼痛に対するP2X4受容体の重要性を発見して以来、10年以上も謎であった、ミクログリアのP2X4受容体を刺激する仕組みを明らかにしたもので、慢性疼痛メカニズムの理解が大きく前進し、痛みを緩和する治療薬の開発への応用が期待されると、研究グループは述べている。
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