■中小企業、製造所で傾向強く
医薬品製造・品質管理の国際基準であるPIC/S-GMPガイドラインへの取り込みが予想されるICHの品質リスクマネジメントと医薬品品質システムの考え方について、国内製造所の12%では品質リスクマネジメントを実施していないことが、厚生労働科学研究「GMP、QMS、GTP及び医薬品添加剤のガイドラインの国際整合化に関する研究」(研究代表者:櫻井信豪PMDA品質管理部長)の調査で明らかになった。また、全体の30%の製造所では医薬品品質システムを実施していないことが判明。特に企業や製造所の規模が小さいほど実施していない傾向が浮かび上がった。同研究班は、調査で明らかになった問題点や課題を踏まえ、品質リスクマネジメントの概念を取り入れたGMP管理モデルを作成していく方針だ。
調査は、品質リスクマネジメントを活用する国際基準のGMPの考え方を広く定着させるため、国内の製造業者を対象にアンケートを実施したもの。品質リスクマネジメント、医薬品品質システムの概念について国内製造所での理解度、実際の取り組み状況や問題点などを把握し、業界団体の日本製薬団体連合会品質委員会の会員を中心に解析を行った。
その結果、製造所の企業規模は500人未満が全体の半数以上を占めており、事業構成は新薬が24%、ジェネリック薬が17%、製造受託が13%だった。製造所の規模を従業員で見ると、100人未満が全体の50%、製造所が取り扱う製品構成は経口固形製剤が30%と最も多く、次いで無菌製剤が18%だった。
品質リスクマネジメントの活用状況を聞いたところ、74%の製造所が品質リスクマネジメントとしての手順書を作成していることが明らかになった。「品質マネジメントの手順書」を作成せず、変更管理などを個別の手順書に規定しているケースも10%の製造所に見られたが、企業規模や製造所規模が大きいほど品質リスクマネジメントの手順書を単独で作成し、国際基準の概念を取り込んでいる割合が高かった。特に13年8月の改訂GMP施行通知の発出に合わせ、自主的に判断した企業が70%を占めた。
さらに、品質リスクマネジメントの実施状況を照らし合わせる頻度を調べたところ、66%の製造所は不定期に実施し、13%の製造所が定期的に実施していることが判明した一方で、依然として12%の製造所では品質リスクマネジメントを行っていないことが明らかになった。
品質リスクマネジメントは、年1回の実施が最も多く、変更管理、逸脱・規格外、バリデーションなど実際的な運用に関する対応が多かった。リスクレビューの実施状況については、品質リスクマネジメントの実施頻度を反映して年1回が最も多かったが、変更時やリスクが高い事象が発生した場合には、その都度リスクレビューを行っているなど、リスクに応じた適切な対応が行われている事例が多く見られた。
また、医薬品品質システムの理解度と実施状況を調べると、約70%とほとんどの回答者が理解していた。品質マニュアルについては65%の製造所が作成しており、企業や製造所の規模が大きくなるほど作成率が高くなる傾向が見られた。ただ、OTCおよび原薬、生薬・漢方製剤分野の製造所は、品質マニュアルの作成率が著しく低かった。
医薬品品質システムを実施していない製造所に対しその理由を尋ねたところ、「資源不足」と回答した製造所が最も多く、次いで「法的拘束力がない」であったが、要員のレベル不足や他部門の理解不足なども挙げられた。研究班は、「医薬品製造所の厳しい資源を有効に活用するためにも、医薬品品質システムは有用であり、さらなる経営者の理解や啓発が必要」としている。