ラットの腹部大動脈瘤モデルを用いた実験により
京都大学は8月18日、ラットの腹部大動脈瘤モデルを用いた実験により、緑茶ポリフェノールの摂取が腹部大動脈瘤の伸展・増大を予防することわかったと発表した。この研究は、同大学医学研究科博士課程の瀬戸崎修司さん、iPS細胞研究所(CiRA)の升本英利特命助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Vascular Surgery」誌に7月26日付けで公開されている。
画像はリリースより
腹部大動脈瘤は一旦破裂すると半数以上の患者が死亡に至る致命的な病気だが、通常は破裂するまで症状がなく、破裂する前に、人工血管に置き換える、血管内からステント付き人工血管を入れ込むなどの外科的治療が必要とされている。瘤の径が増大するほど、破裂の危険は高まるといわれている。
緑茶ポリフェノールは、抗炎症作用や抗酸化作用などの多様な生理作用により、がんや心血管疾患などの予防効果があることが報告されている。そこで、研究グループは、緑茶ポリフェノールの摂取による腹部大動脈瘤の増大予防効果について検討した。
緑茶のもつ潜在的な健康寿命延伸への貢献の可能性
研究グループはまず、ラットを2群に分け、1群には飲料水を、もう1群には緑茶ポリフェノール(ガレート型カテキン)を飲料水に混ぜて2週間投与した。その後、エラスターゼ(タンパク分解酵素)などを腹部大動脈に投与し、ラットの腹部大動脈瘤モデルを作成した。モデル作成後4週間観察した結果、緑茶ポリフェノール投与群では飲料水群に比べ、腹部大動脈瘤の径の増大が抑えられることを確認したとしている。
さらに、大動脈壁の主要な構成タンパク質であるエラスチンの合成が緑茶ポリフェノール群において促進していることがわかった。つまり、大動脈瘤が破裂しづらくなったといえる。また、緑茶ポリフェノール群では、大動脈瘤の増大に悪影響を及ぼすとされている炎症反応が抑えられていることがわかった。肝障害などの副作用は、今回の実験で使用した緑茶ポリフェノールの濃度では起こらなかったとしている。
今回の研究成果は、日本では日常的に愛飲されている緑茶のもつ潜在的な健康寿命延伸への貢献の可能性を示していると、研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果