日本人成人512人分の血漿オミックス解析を実施
東北大学は8月18日、コホート検体512人の血液中の37代謝物の量と全ゲノム解読情報との関連解析の結果、5つの代謝物と5つの遺伝子多型(ミスセンス変異)の相関が得られたと発表した。この研究は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の小柴生造准教授らを中心とした研究グループによるもの。研究成果は、電子ジャーナル「Scientific Reports」に、8月16日付けで掲載された。
画像はリリースより
血液の中にはさまざまな代謝物があるが、その種類や濃度は一人ひとりの健康状態や体質などに左右される。このため、代謝物はさまざまな病気の兆候を示すバイオマーカーとしても注目されている。代謝物の種類や濃度に個人差があること、その個人差が生活習慣に加えて遺伝子にも由来することはこれまでも示唆されてきたが、具体的な遺伝情報との関連性については多くの知見は得られていなかった。特に、日本人においては、一般住民を対象とした大規模なメタボローム解析とゲノム情報との関係に触れた成果はこれまでなかった。
研究グループは、東北メディカル・メガバンク計画のコホート調査のうち、東北大学が実施した地域住民コホートに参加した日本人成人512人分の血漿オミックス解析を行った。対象となった512人については、すでに同計画の別の研究により、高深度で全ゲノム解析が行われており、その解析結果も今回の研究に活用した。
個別化予防・個別化医療につながる可能性
その結果、5つの代謝物と5つの遺伝子多型の間にそれぞれ相関があることを発見。また、この5つの代謝物のひとつにフェニルアラニンがあるが、相関のあった遺伝子多型が存在する酵素には、血中フェニルアラニン濃度と深い関連があると思われる別の希少変異が存在することを発見した。これらの結果と、各酵素タンパク質の構造解析情報を用いると、酵素の活性中心に近い変異は、頻度は低いが影響が大きく、活性中心から遠い変異は、頻度は高いが影響が穏やかであることが示唆されるとしている。
大規模なメタボロームとゲノム、両方の解析を実施し、その関係性を明らかにすることは、一人ひとりのゲノムに合わせた個別化予防・個別化医療につながる重要な基礎研究であり、今後も未来型医療の基盤となるよう解析規模を拡大していくと、研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース