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ヒト iPS-NKT細胞の抗腫瘍効果、マウスの生体内で示す-理研

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2016年08月22日 PM03:00

外来遺伝子がゲノムに挿入されない方法で、ヒトNKT細胞からiPS細胞作製

日本医療研究開発機構(AMED)は8月18日、iPS細胞技術で作製したヒトナチュラルキラーT(NKT)細胞の抗腫瘍効果をマウスの生体内で示すことに成功したと発表した。この研究は、理化学研究所統合生命医科学研究センター免疫細胞治療研究チームの藤井眞一郎チームリーダーらと、免疫器官形成研究グループの古関明彦グループディレクターらの研究グループによるもの。研究成果は、米国の科学雑誌「Stem Cells」に掲載されるのに先立ち、オンライン版に8月1日付けで掲載されている。


画像はリリースより

研究グループはこれまでにNKT細胞の発見から、NKT細胞の活性化機構、細胞機能について研究を進めてきた。特に、NKT細胞の活性化後、多量に産生されるインターフェロンガンマ(IFN-γ)により、自然免疫系ナチュラルキラー(NK)細胞および獲得免疫系キラーT細胞を共に増殖促進・活性化させること(アジュバント作用)で、抗腫瘍効果を発揮することを見出していた。この原理を用いてNKT細胞標的がん治療の臨床試験が行われ、長期平均生存期間の延長効果が確認された。さらに、抗がん機能を持つNKT細胞のみを増殖させることができれば、抗がん効果をより効果的に最大化できると考えられるとしている。

そこで、研究グループは、ヒト末梢血もしくはさい帯血由来のNKT細胞を前培養し、外来遺伝子がゲノムに挿入されない方法により、ヒトNKT細胞からiPS細胞を作製した(NKT-)。さらに、NKT-iPS細胞からのNKT細胞への分化誘導は、ヒトiPS細胞からT細胞を分化誘導する方法を改良することで成功した。次に、iPS-NKT細胞の機能を試験管内で調べた。リガンド刺激に応答してアジュバント効果に重要な働きをするIFN-γの産生能を調べたところ、元のNKT細胞よりも大きな産生能があることがわかった。

免疫系ヒト化マウスで、HLA不適合での効果を解析する予定

また、直接的に腫瘍細胞を殺傷できるかを調べたところ、元のNKT細胞以上に6種類の腫瘍細胞株全てを、強力に殺傷できることがわかった。続いて、iPS-NKT細胞が生体内でも機能的であるかどうかを調べた。免疫不全マウスに腫瘍細胞株(K562)を移植すると、対照(非投与)群では移植した腫瘍細胞が増殖するのに対して、iPS-NKT細胞を投与した群では腫瘍細胞はほとんど増殖しないことがわかった。これにより、iPS-NKT細胞は生体内で直接的に腫瘍細胞の増殖を抑制する機能があることが示されたとしている。

最後に、iPS-NKT細胞が生体内でNK細胞を活性化するかどうかを調べた。免疫不全マウスに末梢血(さい帯血)単核球だけを移植する群、樹状細胞と糖脂質も合わせて移植する群、それらに加えてiPS-NKT細胞も移植する群を用意し、18時間後にNK細胞が免疫不全マウス生体内で活性化されているかを調べたところ、iPS-NKT細胞も移植した群が最も NK細胞が活性化されていることがわかった。つまり、iPS-NKT細胞によりNK細胞が活性化されたことが示された。したがって、iPS-NKT細胞は生体内でアジュバント効果を発揮することが明らかになったとしている。

今後は、免疫系ヒト化マウスを使って、自家・他家移植を模倣した実験系でHLA不適合での効果を解析していく予定。他家移植でも十分な抗腫瘍効果が望めるようであれば、より多くの患者へiPS-NKT細胞を使ったがん免疫療法が実施できると考えられる。臨床応用に向けては、臨床グレードの細胞作製体制の確立、および非臨床試験による安全性確認を進めることで、1日も早い実現を目指したいと、研究グループは述べている。

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