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椎間板線維輪の構成に必須の遺伝子を発見-東京医歯大

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2016年08月18日 PM01:00

壊れた椎間板を修復する治療法望まれる

東京医科歯科大学は8月15日、椎間板線維輪を構成するコラーゲン組織の形成に必須な遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医歯学総合研究科システム発生・再生医学分野の浅原弘嗣教授らの研究グループが、岡山大学整形外科学講座、国立成育医療研究センター研究所、東海大学医学部、米国スクリプス研究所、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校と共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Nature communications」オンライン版に8月16日付けで掲載されている。


画像はリリースより

脊椎椎間板ヘルニアを始めとした椎間板の病気が引き起こす腰痛、下肢痛は日常生活の質を大きく低下させる。消炎鎮痛剤の内服やブロック注射などの治療は、長期の通院が必要になる。また、手術では脊髄神経を圧迫している椎間板を除去することが一般的だが、この治療法では椎間板変性、もしくは変形性脊椎症への進行を予防することができない。そこで、壊れた椎間板を修復する治療法が望まれるが、これは現時点において、まだ実現していない。特に椎間板の外壁をなす線維輪は、その発生や再生メカニズムに不明な点が多く、基礎研究レベルの発展が必要とされている。

研究グループでは以前、腱・靱帯特異的遺伝子Mohawk()を発見し、報告している。このMkx遺伝子は、腱を構成するI型コラーゲンや腱線維をつなぐプロテオグリカンの産生に必須な遺伝子。そして、Mkxノックアウトマウスを作成した結果、腱・靱帯の菲薄化が確認されている。椎間板線維輪もまた、椎骨と椎骨をつなぎ互いの安定性に寄与する靭帯に似た働きをしている。主要な構成要素も靭帯と同様にⅠ型コラーゲンであることから、Mkxが椎間板に与える影響についてこれまで研究を行ってきた。

椎間板再生の新たな治療法開発に期待

研究では、転写因子Mkxがマウスの椎間板の繊維輪外輪やヒトの椎間板においても線維輪外輪に強く発現することを見出した。Mkxノックアウトマウスを用いた解析では、ノックアウトマウスの椎間板線維輪外輪のコラーゲン細線維径が小さいことを確認。また、野生型と比べてノックアウトマウスは、加齢に伴い徐々に椎間板変性が進行することもわかり、力学的に脆弱な線維輪組織が形成されていることが確認された。

次に、Mkxの細胞分化における役割を調査したところ、マウス胚由来の間葉系幹細胞であるC3H10T1/2にMkxを導入した細胞は形態が紡錘形に変化し、種々の腱・靭帯関連遺伝子の発現の上昇が認められ、Ⅰ型コラーゲンを生成するようになった。このことから、Mkxは間葉系幹細胞を、線維輪外輪組織を形成する能力をもった細胞へと誘導する力があることがわかった。

また、この細胞はマウス椎間板変性モデルの椎間板線維輪内に移植すると、そこに豊富なⅠ型コラーゲン線維を形成し、健常組織に近い物性をもつことも確認された。これらの結果から、Mkxで誘導された細胞を用いることで、傷んだ線維輪組織を修復できる可能性を示唆することができたとしている。

現在、多くの患者が存在する椎間板ヘルニアや椎間板変性症、さらに進行した変形性脊椎症に対し、今回の結果を応用することで、椎間板再生という新しい治療が開発されることが期待できると、研究グループは述べている。(横山香織)

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