政府が10日に開いた「開発途上国の感染症に係る官民連携会議」で、日本製薬工業協会(製薬協)は、薬剤耐性感染症(ARI)に対する治療薬の開発を促す新たな枠組みとして、研究開発への補助金の支給など、欧米各国が採用している開発インセンティブの導入を求める提言を行った。
国際的に脅威となっているARIへの対策をめぐっては、厚労省が今月3日の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、ARI治療薬の開発促進を目的としたスキームを公表。未承認・適応外薬会議では、欧米等6カ国で承認されておらず、医師主導による国内第III相治験を実施中または終了したものや、優れた試験成績が論文等で公表されているなどの一定の要件を満たす治療薬を対象に会議で検討を行った上で、企業に開発を要請している。
新たなスキームでは、ARI治療薬に限定して開発初期の欧米未承認薬にまで対象を拡大。開発要請または開発企業の公募が決まった品目は、通常は月に1回の薬事戦略相談を随時受け付けるほか、総審査期間を現在の12カ月から9カ月に短縮するなど、企業にインセンティブを与える方針を示している。
こうしたインセンティブ案について製薬協は、既に開発から撤退してしまった企業やベンチャー企業などを引きつける魅力に欠けると指摘。その上で、欧米各国でのインセンティブのあり方を参考に、研究開発への補助金の支給や、最低売上補償制度、データ保護期間の延長などをインセンティブとして盛りこむべきとした提言を、7月26日に厚労相に提出していた。
政府は提言の内容を精査し、厚労省だけでなく関係省庁とも連携して具体化に向けた検討を進める。