UNCOVER-J試験に日本人107人が参加
患者のQOLに深刻な影響を及ぼす乾癬――。日本には、約43万人の患者がいると推計されている。日本イーライリリー株式会社と鳥居薬品株式会社は8月3日、都内でヒト化抗ヒトインターロイキン-17A (IL-17A)モノクローナル抗体「トルツ(R)」(一般名:イキセキズマブ)の承認記者発表会を開催。日本医科大学大学院医学研究科皮膚粘膜病態学分野教授の佐伯秀久氏が講演した。
日本医科大学大学院医学研究科
皮膚粘膜病態学分野教授の佐伯秀久氏
イキセキズマブは、乾癬および関節症性乾癬の病態に深く関与しているIL-17Aに高い親和性で結合し、その活性を中和するモノクローナル抗体。その有効性および安全性は、これまで行われた世界21か国の3,800人以上の中等症から重症の尋常性乾癬患者を対象とした3つの大規模な国際共同第3相臨床試験(UNCOVER-1、UNCOVER-2、UNCOVER-3)、国内第3相臨床試験(UNCOVER-J)および活動性関節症性乾癬の患者を対象とした国際共同第3相臨床試験(SPIRIT-P1)で確認された。
このうち、日本人107人が参加したUNCOVER-J試験は、日本人の局面型皮疹を有する乾癬(関節症性乾癬を含む)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬患者におけるイキセキズマブの有効性および安全性の評価を目的に実施された。その結果、有効性については、乾癬症状の顕著な改善が見られ、主要評価項目である12週時のPASI75達成率は98.7%、32.1%がPASI100(寛解)を達成。52週まで効果が持続した。安全性については、他の国際共同第3相試験の成績と同様であり、日本人乾癬患者に特有の安全性の懸念は認められなかった。乾癬性紅皮症および汎発性膿疱性乾癬患者にも特有の安全性の懸念は認められなかったとしている。
生物学的製剤へのアクセス確保が課題
生物学的製剤が適応となるのは、外用薬、内服薬、その他全身療法では満足のいく治療効果が得られない患者や、副作用が実際に発現しており、十分な用量の内服または光線療法ができない患者だが、佐伯氏は、その利用は中等症以上の患者18万人の約1.2%にとどまることを指摘。患者と医師の乾癬治療のゴールとしては、「従来はPASI75を目標としていたが、PASI90、可能であればPASI100を目標にしたい」とし、生物学的製剤の導入が可能な施設を拡充するなど、治療へのアクセス確保を今後の課題のひとつに挙げた。
さらに乾癬患者は抑うつ、不安および自殺傾向が高く、爪乾癬がひどく人目が気になる、家族にも負担をかけて申し訳なく思っている、といったさまざまな悩みを抱えているとし、「患者さんの悩みを改善できるように、サポートしていきたい」と語った。
乾癬患者の治療選択肢のひとつとして、必要な症例には早期から生物学的製剤が導入できるよう、治療体制の確立が期待される。
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・日本イーライリリー株式会社 プレスリリース