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【岐阜県薬、岐阜薬科大】職能を数値で“見える化”-薬局薬剤師の介入事例を収集

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2016年08月08日 AM10:30

岐阜県薬剤師会は、岐阜薬科大学実践社会薬学研究室と共同で、院外処方箋の調剤や一般用医薬品の販売時に薬剤師の介入によって処方変更や副作用回避などに至った事例を、会員の薬剤師から収集している。2014年12月から15年10月に収集した631例を解析した結果、薬局薬剤師は薬物療法や医療経済の適正化に貢献していることが明らかになった。評価しづらい薬剤師職能を数値で“”する体制を構築できた意義は大きい。今後も改良を加えながら事例の収集、解析を続けていく。

岐阜県薬はこの事業を「Pharmaceutical Intervention Record」(PIR)事業と命名。会員の薬局薬剤師を対象に、薬剤師の介入によって処方変更や副作用回避などが図られた事例の収集を14年12月から開始した。

会員は専用ホームページにアクセスし必要事項を入力する。具体的には、[1]報告者の基本情報(氏名、薬局名など)[2]患者情報(年齢、性別、多剤併用状況など)[3]介入のための情報源(処方箋、薬歴、お薬手帳など)[4]薬学的介入をした要因(誤処方、処方もれ、重複処方、過量投与など)[5]提案した薬学的ケアの内容(薬剤中止、薬剤変更など)――の5項目をフォーマットに沿って入力する。

薬剤師の介入によって患者の不利益が回避・軽減された事例を収集する日本病院薬剤師会のプレアボイド事業を参考に、PIR事業を立ち上げた。薬局薬剤師の薬学的ケア実践例を組織的に収集する動きは他にあまりないとし、岐阜県薬として事例を収集・解析して薬局薬剤師の職能を数値で“見える化”したいと考えた。

実際に収集事例の解析によって、薬学的介入を行った事例の全体像が浮かび上がった。14年12月から15年10月に70薬局から収集した631例を解析したところ、薬学的介入に踏み切った要因は多い順に誤転記・誤処方、処方もれ、重複投与、同種同効薬の重複、過量投与、その他の副作用、ノンコンプライアンス、禁忌などとなっていた。その要因に基づき提案した薬学的ケアは多い順に薬剤中止、薬剤減量、薬剤変更、薬剤追加、薬剤増量、用法変更などとなっていた。

薬学的介入に踏み切った要因を詳しく分析すると、患者の希望とは異なる薬剤の処方、規格が適正ではない薬剤の処方、改善している症状に対する頓服処方などが認められた。薬剤師は重複投与、同種同効薬の重複、過量投与を含めて不必要な処方を検出し、中止や減量を提案して副作用の回避や医療経済の適正化に貢献していることが明らかになった。

さらに、中止や減量だけでなく薬剤追加や増量も提案し、経済性や安全性に加えて薬物療法の有効性にも貢献していることが示された。

一方、薬学的介入を行った情報源は多い順に処方箋、薬歴、患者の訴え、お薬手帳などとなっていた。このうち患者の訴えがある群ではない群に比べて、薬剤師が処方もれを検出し、薬剤追加を提案する割合が高かった。患者とのコミュニケーションの中で薬剤師は、医師には伝わっていなかった患者の症状や希望、服薬状況などを把握し、提案に役立てていた。距離的にも心理的にも身近な存在として薬局が位置づけられることの重要性を裏打ちする結果となった。

また、情報源としてお薬手帳を活用した群ではそうでない群に比べて重複投与、同種同効薬の重複、併用禁忌を検出した割合が高かった。服用薬を一元的に把握できるお薬手帳は薬学的管理を行う上で重要なツールであることが、この解析からも裏づけられた。

PIR事業を担当する岐阜県薬理事・薬局委員会職能対策グループの鈴木学氏(すずの木薬局)は「薬剤師は本質的に何かが起こってから介入する職業ではなく、事が大きくならないように介入する職業であるため、その職能は見えづらい。今回、PIR事業によって薬局薬剤師が様々な観点から介入、提案を行っていることを具体的なデータとして示すことができた」と語る。

今年1月には事例入力フォームを改良し、投与日数や回数などの増減を明確に把握できるようにした。鈴木氏は「医療経済における薬局薬剤師の職能の意義を、より明確に数値化できるものと考えている。今後もPIR事業を継続し、薬剤師職能の重要性を定量的に見える化したい」と話している。

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