厚生労働省は、国際的に脅威となっている薬剤耐性感染症(ARI)に対する治療薬開発を促す新たな枠組みを設ける。未承認薬迅速実用化スキームの要件を拡大するもので、今後、検討が進められているARI治療薬の臨床評価ガイドラインの骨子案を秋頃までにまとめた上で、スキームの対象となる必要な一定要件の具体的内容を議論する方針だ。3日の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に示した。
厚労省は、世界に先駆けて重篤な疾患の治療薬を開発するため、欧米など6カ国のいずれの国でも承認されていないものの、医師主導による国内第III相試験を実施中または終了していること、優れた試験成績が論文等で公表されているなどの一定要件を満たす治療薬を「未承認薬迅速実用化スキーム」の対象品目として同会議で検討し、企業に開発要請を行っている。
今回、4月にARI治療薬の優先審査制度の創設などを盛り込んだ「AMR対策アクションプラン」がまとめられたことを踏まえ、市場性の低いARIに対する新薬開発を促すため、ARI治療薬の開発要望に限定してスキームの要件を拡大することにした。一定要件を満たしたARI治療薬の要望については、開発初期の欧米未承認薬にまで対象を広げる。
また、ARI未承認薬のスキームで、開発要請または開発企業の公募が決まった品目については、通常は月1回受け付けている薬事戦略相談を随時受け付ける優先相談を行うことや、総審査期間の目標を12カ月から9カ月に短縮するなど、企業にARI治療薬の開発インセンティブを与える方針だ。厚労省は、現在検討を進めているARI治療薬の臨床評価ガイドラインの骨子案を秋頃までにまとめた上で、スキームの対象となる必要な「一定の要件」の内容を議論する考え。