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不正医薬品、日本が標的-レジストラのGMO経由で

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2016年08月05日 AM11:00


■海外では死亡例も報告

違法医薬品販売ウェブサイト(不正薬局ウェブサイト)が日本で猛威を振るっている。オンライン薬局を対象に違法販売の監視・調査業務を行う米レジットスクリプト社によると、世界の不正薬局ウェブサイトの約1割が日本語サイトであり、今や日本が不正医薬品販売のサイバー犯罪の世界第2位の標的だ。さらに、違法に医薬品を広告、販売するウェブサイトについては、それを管理するドメイン名登録業者()が対策を講ずる義務が生じるが、日本語の不正薬局ウェブサイト全体の3分の2は、日本最大のレジストラ「GMOインターネット」に登録されているという実態が浮かび上がった。海外ではインターネットでの医薬品不正販売による死亡例が報告されており、レジットスクリプトでは「一般の人たちの健康や安全を脅かす大きな問題」として警鐘を鳴らしている。

インターネット上で未承認の医療用医薬品を販売する薬局ウェブサイトは、世界に約3万以上存在し、97%が不正とされている。レジットスクリプトではその約1割が日本語ウェブサイトと推定している。薬剤の供給先は、規制されていないインドやシンガポール、中国、トルコなど免許を持たない海外の薬局から配給され、薬剤師や医師が介在することなく購入者の手に渡っている。これらは製造元、流通経路などが不明な薬剤だ。

レジットスクリプトでは、不正医薬品販売問題の解決に向け、世界中のレジストラと協力し、医薬品の違法広告、販売を行うウェブサイトを閉鎖する活動を進めてきた。国内では厚生労働省の委託業務として、1年間で日本語の不正薬局ウェブサイト約2300件のうち、約1900件の閉鎖にこぎつけた実績がある。

ただこれらのほぼ全ては、海外のインターネット会社経由によるもので、日本のレジストラによる閉鎖ではない。レジットスクリプトの岡沢宏美氏は、本紙の取材に対し、「日本だけが世界的に遅れている」と指摘し、世界中の不正医薬品販売業者から日本が標的とされている現状に懸念を示す。

中でも、日本語不正薬局ウェブサイトの66%が国内最大手レジストラのGMOインターネット1社に登録されているという問題だ。レジットスクリプトでは、再三にわたってGMOインターネットに対し、不正薬局ウェブサイトを閉鎖するよう要請を行ってきたが、一向に違法行為に使用されているドメイン名の停止措置が行われていないという。

世界最大規模のレジストラで、不正医薬品販売に使用されているドメイン名の停止を拒否しているのはGMOインターネットだけで、米国やインド、中国、欧州のレジストラは日本語の不正オンライン薬局のドメイン名も積極的に停止させているという。岡沢氏は、「海外のレジストラが不正薬局ウェブサイトを閉鎖させたとしても、日本最大手のレジストラが共同歩調を取らなければ、そこに不正薬局ウェブサイトが集中する」と話す。

インターネットの不正医薬品販売では巧妙な仕掛けが用意されている。多くの一般者がインターネット上で薬剤名を入力して検索すると、医療用医薬品では広告等が制限されているため、上位には個人のブログやアフィリエイトサイト、違法広告が表示され、そこから不正薬局ウェブサイトにたどり着いて購入に向かう。

そこには、ウェブサイト運営者のほかに、レジストラや広告会社、アフィリエイト、ブログ運営会社、インターネットオークションなどの運営会社、銀行やクレジットカード会社、運送会社などがかかわり、不正な医薬品販売で得られた収益が様々な利害関係者に分配されている。岡沢氏は、「多くの利害関係者が違法医薬品販売に関与させないための仕組みづくりが必要」と訴えている。

■若年に広がる個人輸入‐官民挙げた啓発活動を

一方、一般の人たちの医薬品購入にあたってのリテラシー教育も課題だ。製薬企業の有志団体が行った調査によると、一般の人たちによる医療用医薬品の個人輸入経験が4%強という驚くべき結果が発表された。購買行動を見ると、医療目的というよりは、勃起不全治療薬や美容目的の抗肥満薬などを購入していた。特に若い世代だけを絞ると、購入経験比率は高く、副作用などのリスクを認識せず、インターネット上から手軽に安く購入できるという利便性から、個人輸入による不正な医薬品購入は増加の一途を辿っている。

7月13日には、抗癌剤「」「」の個人輸入による不適切な使用実態が日本臨床腫瘍学会から報告され、臨床現場が副作用に対して適切に対処できないとの問題が明るみに出た。

標的とされる日本で、国、業界団体、消費者団体、レジストラが一緒になって、インターネット販売業者による違法行為を断ち切ると同時に、一般の人たちへのリスク啓発を進めていく必要があるといえそうだ。

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