長崎大熱帯医学研究所に「東芝メディカルMSラボ」設置
東芝メディカルシステムズ株式会社と長崎大学は8月3日、熱帯感染症や新興・再興感染症を対象とした新たな遺伝子検査システム開発についての共同研究契約を締結するとともに、同大学熱帯医学研究所内に「東芝メディカルMSラボ(Molecular Solution Laboratory)」を設置し、共同研究を開始すると発表した。
近年、グローバル化の進展により、デング熱やジカ熱など途上国の病気ととらえられていた熱帯感染症や新興・再興感染症が、発生国だけにとどまらず国境を超えた問題として、公衆衛生だけでなく世界経済にも大きな脅威となっている。
熱帯感染症などの制圧には早期診断が重要であり、遺伝子検査は原理的に高感度に検出できるという特徴から将来的な普及が期待されている。しかしながら、複雑な前処理手順を安全に行うには検査者に一定の熟練度が要求されるため、検査時間全体の短縮(迅速)や手順の簡易化(簡単)による非熟練検査者への二次感染防止(安全)に課題が残っている。
開発期間は2016年8月から2年間
長崎大学はグローバルに教育・研究展開し、熱帯感染症や新興・再興感染症に関する研究で多くの成果を重ね、感染症の制圧に向けて大きな役割を担い、最先端の研究を進めている。一方、東芝メディカルは、遺伝子検査システムを用いた家畜感染症検出キットやコメ品種識別キットを製品化。さらに長崎大学と連携し、2015年には判定時間が約11.2分と従来システムに比べて1/6程度に短縮できる「エボラ出血熱迅速検査システム」を実用化し、ギニア政府に供与した実績がある。また、世界的な課題となっているジカ熱対策のため、ジカウイルスの迅速検査システム開発でも連携している。
熱帯感染症や新興・再興感染症の診断では、感染拡大の早期対応のため検査の迅速性が重要になる。遺伝子検査では、「抽出」「増幅」「検出」という3つのステップが必要となるが、現在使用されている検査システムは、後半の「増幅」「検出」だけを自動化、迅速化したものが主流であり、前処理となる「抽出」では複雑な手順を手作業で行っている。このため余分な時間がかかり、迅速検査の優位性を十分に生かせていない。また、「抽出」作業では実検体を扱うため、非熟練検査者への二次感染が懸念されている。
これらの課題を解決するために、長崎大学と東芝メディカルは連携を強化し、自動抽出システムを開発。途上国への支援を想定し、「抽出」「増幅」「検出」が、誰でも、どこでも、簡単で安全に行うことができる遺伝子検査システムの開発を進めていきたいとしている。なお、今回の共同研究契約の開発期間は2016年8月から2年間の予定。
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・東芝メディカルシステムズ株式会社 ニュースリリース