アファチニブの減量がPFS、有害事象およびPROsに及ぼす影響を事後解析
2016年6月3~7日、米国・シカゴで開催された第52回米国癌治療学会議(ASCO 2016)で、アファチニブとゲフィチニブの効果を直接比較した無作為非盲検第2b試験「LUX-Lung7(LL7)」における患者報告アウトカム(PROs)の結果が報告された。
画像はwikiメディアより
LL7は、治療歴のないEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とした第2世代のErbBファミリー阻害剤「アファチニブ」と第1世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤「ゲフィチニブ」を直接比較した第2b相試験。ASCO 2016では、患者報告アウトカムに関する結果と、アファチニブの減量がPFS、有害事象およびPROsに及ぼす影響について、事後解析を行った結果の報告が行われた。
PROsは、EQ-5Dとその視覚的評価法であるEQ-VASを使用。治療前(ベースライン)、治療中は8週毎、治療終了時及び治療後の最初の診察時に評価した。アファチニブの用量は40mgから開始し、4週後にグレード1を超える有害事象が認められない場合は50mgに増量。逆に次の場合、減量が行われた。
- グレード3以上の有害事象
- 適切な支持療法にも関わらずグレード2以上の下痢が2日以上続く場合
- グレード2の嘔気・嘔吐が7日以上続く場合
- グレード2以上の腎機能の悪化が認められた場合
減量は、有害事象がグレード1または治療開始前に回復するまで、最長14日間休薬し、10mg減量して投与を再開することと規定。アファチニブの減量を行う前後で、有害事象の頻度及び重症度を比較。さらにアファチニブを6か月以内に40mg未満に減量した患者群と6か月以上40mg以上を投与した患者群で、PROs及びPFSの比較を行った。
副作用による治療中止はアファチニブ群とゲフィチニブ群でともに6.3%、EQ-5D・EQ-VASも差は認められず
減量を行った患者はアファチニブ群で多かった(アファチニブ群(67/160例、41.9%)、ゲフィチニブ群(3/159例、1.9%))。これは、ゲフィチニブでは承認の用法用量が250mgのみであるため考えられる。アファチニブ群で減量を要した患者は、非アジア人がアジア人に比べて多かった(64% vs 36%)
副作用のために治療を中止した患者は、両群ともに6.3%。アファチニブの減量によって有害事象の管理が効果的に行われたためと考えられる。また、アファチニブの減量により、下痢、ざ瘡様皮疹、爪囲炎などの有害事象の頻度及び重症度ともに減弱することが示された。PROsの検討では、EQ-5D質問票の回収率は高く(>90%)、EQ-5D及びEQ-VASスコアの経時的変化には、アファチニブ群とゲフィチニブ群では、臨床的に意義のある差は認められなかった。このことにより、副作用の発現率は両群にて異なるものの、患者報告によるQOLに関してはアファチニブとゲフィチニブに差がないことが示唆された。
アファチニブを40mg未満に減量した患者群と40mg以上を投与した患者群について、EQ-5D及びEQ-VASスコアを比較したところ、両患者群ではこれらの指標に差はなく、アファチニブの減量はPROsに影響を及ぼさなかった。さらにアファチニブを40mg未満に減量した患者と40mg以上の投与をした患者群では、PFSにも差が認められなかった(PFS中央値:12.8か月 vs 11.0か月、p=0.1440)。
これらの結果について、筆頭筆者であるVera Hirsh氏は「有害事象に従って適切な投与量までアファチニブを減量することは、有効性に不利益をもたらすことなく、有害事象を軽減できる効果的な投与法であり、LUX-Lung3及びLUX-Lung6試験での結果とも一致している」と述べている。