■厚労省懇談会
厚生労働省の「医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会」は7月29日、医療系ベンチャー企業による医薬品・医療機器の創出を促すための支援策をまとめた報告書を、塩崎恭久厚労相に提出した。日本の優れたシーズを製品化し、販売によって得た利益で次の革新的な医薬品など開発につなげる好循環を生み出すための制度づくりや人材育成を提言。国に対して規制から育成への姿勢転換を促し、オール厚労省での支援体制構築などを求めた。厚労省は、報告書に盛り込まれた支援策を来年度予算の概算要求に反映させていく。
報告書では、医療系ベンチャーの振興を実現するため、日本と世界の保健医療水準の向上に寄与すると共に、日本経済の成長に貢献することを目標に設定。世界でも最も優れた事業環境を整え、ベンチャーが牽引車となるイノベーションの好循環が生まれることを目指すべき姿に掲げた。
その上で、厚労省に対して、これまでの規制を遵守させるといった姿勢から、ベンチャーの事業や取り組みを支援し、成長を促していく視点に変えていくべきと強調。スピード感を持った取り組みにより、医薬品や医療機器のエコシステムを醸成するための制度作りを求めた。また、エコシステムを構成する人材育成と交流の場づくりの推進を要望。厚労省内にベンチャーの振興策を企画、実行、モニタリングする体制を設け、継続的にベンチャー支援の取り組みを充実させるべきとし、オール厚労省での支援体制を構築するよう求めた。
具体的には、患者数が極端に少ないなど開発が難しい革新的な医療機器について、市販前の臨床試験の負担を最小化し、市販後調査を充実させることにより、早期承認を行う制度を構築していくべきとしたほか、ベンチャーの成長を促すイノベーションを評価する薬価制度の構築を提言。ベンチャーの費用構造を含め特性に対応した薬価を評価するため、中央社会保険医療協議会に作業部会を設け検討することなどを求めた。医療機器ベンチャーに対する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認審査・相談料の減免を再生医療ベンチャーに拡充すること、オーファン疾患に対する開発助成の増額も要望した。
さらに、厚労省に対し、ベンチャー振興の司令塔機能として「ベンチャー等支援戦略室」(仮称)を1年以内に設置すべきと提言。厚労省が主導して大手製薬企業などとベンチャーのマッチングを行うことが必要としたほか、戦略室がPMDAや臨床研究中核病院とも連携しコーディネーター機能を発揮することで、総括的な相談窓口としても機能することが必要とした。