8.6万人のテレビ視聴時間を収集し、20年間追跡調査
大阪大学は7月27日、長時間のテレビ視聴が肺塞栓症の死亡リスクの増加と関連することを世界で初めて解明したと発表した。研究は、同大学大学院医学系研究科社会医学講座(公衆衛生学)の磯博康教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓病学会の学術雑誌「Circulation」オンライン版に7月26日付けで公開された。
画像はリリースより
肺塞栓症の発症率は日本では欧米に比べて低いとされているが、近年は増加しているとの報告がある。日本では、体を動かさない生活習慣が広がってきており、これが増加の一因となっている可能性がある。長時間の座位でのパーソナルコンピュータの使用後に肺塞栓症で死亡した例の報告もある。しかし、これまで社会の集団の中で長時間のテレビ視聴と肺塞栓症発症の関連を定量的に調査した研究はなかった。
研究では、JACC研究(Japan Collaborative Cohort Study)の参加者のうち、1988年から1990年に日本全国45地域の40~79歳の8万6,024人を対象にアンケート調査を行い、1日あたりの平均テレビ視聴時間ほか生活習慣に関する情報を収集した。その後、およそ20年間にわたって参加者の死亡状況を追跡し、2009年末までで59人の肺塞栓症による死亡を確認した。
肺塞栓症の死亡リスク、5時間以上で2.5倍に
これらのデータを解析したところ、テレビ視聴時間が1日あたり2.5時間未満の人に比べて、2.5~4.9時間の人では肺塞栓症による死亡リスクが1.7倍、5時間以上では2.5倍になることがわかった。テレビ視聴時間2時間につき40%の肺塞栓症死亡リスクの増加も認められた。これらの関連は、参加者の生活習慣や健康状況を統計学的に考慮した後の数値。
肺塞栓症死亡リスクの増加は、テレビを見ているときに足を動かしていないことが主な原因であると考えられる。塞栓症の予防にはエコノミークラス症候群と同様の方法が推奨され、長時間にわたってテレビ視聴などの足を動かさない状況が続くときは、1時間に1回は立って、5分程度歩いたり、ふくらはぎをマッサージしたりするとよいとしている。
今回の研究で解析されたデータは、昨今のようにパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末の利用が盛んになる前のものであり、今後はこれらの新しいテクノロジーの利用状況や肺塞栓症との関連の調査も必要であると、研究グループは述べている。
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