遺伝子の発現を制御する「遺伝子スイッチ」の働き
東京工科大学は7月25日、がんなどのバイオマーカーとして期待されるメチル化DNAを簡便に測定できる方法の開発に成功したと発表した。この研究は、同大学応用生物学部の吉田亘助教、軽部征夫教授らと、東京農工大学大学院の池袋一典教授、長澤和夫教授、埼玉大学大学院の飯田圭介博士、サウジアラビアのUmm Al-Qura Universityとが共同で行ったもの。研究成果は、科学誌「Analytical Chemistry」オンライン版に6月28日付けで掲載された。
画像はリリースより
ヒトゲノム中の塩基シトシンのメチル化は、遺伝子の発現を制御する「遺伝子スイッチ」としての働きを持っており、がん細胞ではこの遺伝子スイッチが異常になっていることが確認されている。このスイッチの異常、すなわちがん関連遺伝子のメチル化頻度は、がんのバイオマーカーとして期待されている。
生活習慣病やうつ病発症の簡易診断への応用に期待
通常、DNAは二重らせん構造を形成するが、特定の配列を持つDNAは四重鎖構造を形成する。今回の研究では、四重鎖DNAがメチル化されると、それをPCRで増幅させた場合、PCR増幅効率が減少することを発見。実際にヒトゲノムを対象とし、がん関連遺伝子であるVEGF-A(血管内皮細胞増殖因子をコードする遺伝子であり、血管新生に関連)中の四重鎖領域の増幅効率をリアルタイムPCR法により測定した結果、メチル化頻度に依存して減少することがわかった。すなわち、この方法で標的がん関連遺伝子のメチル化頻度を簡便に測定できるとしている。
この方法を使用すれば、従来よりも簡便にがん関連遺伝子のメチル化頻度を測定できるため、がんの簡易診断への応用が期待できる。また、DNAメチル化の異常はがんだけでなく生活習慣病やうつ病の発症にも関連しているため、それら疾患の簡易診断への応用も期待される、と研究グループは述べている。
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・東京工科大学 プレスリリース