子宮頸がん予防ワクチンの接種勧奨一次中止のため
大阪大学は7月19日、1993年度から2008年度生まれの日本女性の20歳時のHPV(ヒトパピローマウイルス)16・18型感染リスクを生まれ年度ごとに算出し、ワクチン接種の勧奨再開が1年遅れるごとにHPV16・18型の感染率の著明に高い集団が生じ、HPV感染リスクが生まれ年度によって大きく異なる可能性があることを明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大大学院医学系研究科器官制御外科学講座(産科学婦人科学)の田中佑典医員と上田豊助教らの研究グループによるもの。研究成果は、英医学誌「The Lancet Oncology」7月号オンライン版に6月29日付けで掲載された。
HPV16・18型感染の子宮頸がん予防ワクチンについては、日本では2013年4月から12~16歳を対象に定期接種が始まった。しかし、同年6月以降、副反応とされる多様な症状の出現の影響で、厚生労働省によるワクチン接種の勧奨が一時中止された状態が続いており、その結果、生まれ年度によってワクチンの接種率に大きな差が生じていることが問題視されていた。
勧奨中止期間に12~16歳であった女性を接種対象に
研究グループは、1993年度生まれの少女の20歳時のHPV16/18陽性率を「1」としてグラフを作成。各生まれ年度の少女の20歳時のHPV感染率(対1993年度生まれ)を算出するにあたっては、7項目の仮定を行った。
- HPV感染率は、各年度生まれの女性において、ワクチンを接種していない状態で性交渉を経験した割合に比例
- 20歳・19歳・18歳・17歳・16歳・15歳・14歳・13歳・12歳における性交渉の経験率はそれぞれ65%・55%・42%・25%・15%・5%・2%・1%・0%
- ワクチン接種の勧奨がなされていた時期(2010年度・2013年度・勧奨再開年度を除く)においては、少女らは接種対象年齢のうち最も若い年齢でワクチンを接種
- 2010年度の13歳・14歳・15歳・16歳のワクチン接種率はいずれも70%
- 2013年度の12歳・13歳においてはワクチン接種率はそれぞれ1%・4%
- ワクチン接種勧奨再開後の累積接種率は70%
- ワクチン接種の有無と性交渉経験率との間に相関関係はなく、互いに独立
その結果、HPV感染リスクが生まれ年度によって大きく異なる可能性があるという分析結果が得られたとしている。
今回の研究成果によって、子宮頸がん予防ワクチンの接種率の生まれ年度による違いから生じる、将来のHPV感染リスクの格差を最小限にとどめるには、今年度中の勧奨再開が望ましいことが明らかになった。仮に、厚生労働省による勧奨再開が来年度以降になる場合には、勧奨中止期間に12~16歳であった女性を接種対象に含めることで、その影響を最小限にできる可能性があると研究グループは述べている。
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