低侵襲と高空間分解能を両立させた内視鏡
東北大学と株式会社ルシールは7月19日、共同で研究・開発した「極微細蛍光内視鏡イメージングシステム(Ultra-thin Fluorescence Endoscope Imaging System:U-FEIS)」の商品化を発表した。U-FEISは特許出願中で、ルシールが販売を行う。
画像はリリースより
この研究・開発は、同大学大学院医学系研究科の小山内実准教授を中心とした研究グループによるもの。U-FEIS は7月20日から開催される「第39回日本神経科学大会」の企業ブースで展示され、主に大学など研究機関を中心に販売される予定。
U-FEISは、低侵襲で実験動物の脳の神経活動を簡便に可視化できるシステム。従来の顕微鏡では見ることができなかった脳深部のイメージングを低コストで行うことができるという。低侵襲の極微細内視鏡部と専用小型イメージングシステム、画像取得用カメラ、蛍光色素励起用レーザーで構成されている。内視鏡部分は、外径350µmの極微細レンズと、1万画素数のイメージファイバにより構成され、細胞の活動を十分に認識する2µmレベルの空間分解能を持っており、低侵襲と高空間分解能を両立させた内視鏡。専用小型イメージングシステムは約30cm四方程度の大きさであるため、実験動物のすぐ横に運ぶことができ、場所にとらわれずどこでもイメージングをすることができる。
これらの装置群をイメージングシステムとしてパッケージ化し、光伝送効率を最大限に追求した結果、微弱な蛍光を発する個々の細胞を見分けることができ、脳深部での神経活動の多細胞イメージングが可能となった。
がんの原因究明や治療薬の開発、即効的ながん診断への展開に期待
さらにシステムとしての一体性と操作性を追求した結果、高度な専門知識や技術が不要で、かつ再現性の高いデータを簡便に取得することが可能となった。in vivo研究および臨床での利用場面を想定し、小型化による可搬性を重視した設計となっている。
U-FEIS によって、脳や神経の深部でどのような細胞状態の変化が起こっているかに関する研究がさらに広まり、脳の記憶メカニズム、神経の情報伝達メカニズムの解明が進むことが予想される。これにより、依然有効な治療方法が確立されていない、アルツハイマー病や脊髄損傷などの治療薬や治療方法の開発にも新たな発見が加わることが期待されるとしている。
また、U-FEISに搭載された極微細内視鏡技術や、細胞の発する微弱な蛍光変化の捕捉技術によって、より精緻なレベルでがん細胞の可視化が進むことが見込まれる。このようながんの原因究明や治療薬の開発はもとより、その操作性や可搬性の高さから、臨床現場での即効的ながん診断への展開も考えられるほか、工業的な非破壊検査など広範囲な応用が可能であると、研究グループは述べている。
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