健常者32人のホラー映画とコントロール映画視聴時の脳活動調査
生理学研究所は7月14日、恐怖による交感神経活動の脳内ネットワークを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所の定藤規弘教授、九州大学大学病院心療内科の吉原一文講師らの研究グループによるもの。研究結果は「Neuroimage」に4月19日付けでオンライン掲載された。
画像はリリースより
恐怖刺激などの環境ストレスに対処するためには、交感神経系の活動上昇は必要不可欠。最近の脳機能研究では、前帯状皮質や前部島皮質の脳活動が交感神経活動と関連していることが報告されている。しかし、恐怖による交感神経活動に関する脳内ネットワーク(脳領域間の機能的な結びつき)についてはわかっていなかった。
そこで研究グループは、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、32人の健常者を対象にホラー映画とコントロール映画を視聴した時の脳活動を調査した。fMRIの撮像時には指先の温度を交感神経反応の指標として測定。MRIの撮像後に、被験者はこれらの映画を再度視聴し、恐怖の程度を3秒ごとに評価したとしている。
恐怖大きいほど、左扁桃体と前帯状皮質の機能的な結びつき強く
その結果、交感神経活動と関連する脳領域として「前帯状皮質」と「前部島皮質」と「前部前頭前野」と呼ばれる領域が同定された。脳領域間の機能的な結びつきの解析では、ホラー映画を見た時はコントロール映画を見た時と比較して、扁桃体と前帯状皮質、扁桃体と前部島皮質との機能的な結びつきが強くなっていた。また、恐怖の程度が大きければ大きいほど、左扁桃体と前帯状皮質との機能的な結びつきがより強くなっていることが明らかになった。
これにより、恐怖と自律神経系とのつながりにおいて扁桃体と前帯状回の機能的な結びつきが重要な役割を果たしていることがわかった。これらの研究を不安障害や自律神経症状を呈する患者に応用することで、今後の不安障害や自律神経失調症などの疾患の病態解明や治療技術開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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・生理学研究所 プレスリリース