■麻薬処方癌患者の症状改善
秋田県の由利組合総合病院は、外来で医療用麻薬が導入された癌患者に対し、薬剤師が看護師の問診をもとに事前面談して疼痛や副作用の評価を行い、必要な場合は医師へ処方提案する「オピオイドサポート」の取り組みを進めている。採血などの待ち時間を利用し、看護師が痛みや日常生活で困ったことなどを問診で聞き取り、評価シートに記載。それをもとに緩和ケアチームの薬剤師が外来診察前に面談して疼痛や副作用の状態を評価し、必要に応じて医師に処方提案を行うというもの。その結果、薬剤師の処方提案が患者の痛みや副作用の改善につながったほか、看護師と協働することで、外来の診察前面談において患者への服薬指導だけでなく、生活面の指導などを踏まえた多角的な評価ができるようになったという。
同院では、癌と診断された早期から外来診察で医療用麻薬が開始となる場合も少なくない。ただ、外来で医療用麻薬が処方された患者では、服用方法が間違っている例も見られたことから、緩和ケアチームの薬剤師が医療用麻薬が導入された外来患者に対して、院内薬局で服薬指導を行い、次回以降の外来診察前に看護師による疼痛や副作用などの問診をもとに薬剤師が評価し、疼痛管理や副作用対策が不十分と判断した場合には、医師への処方提案を行う「オピオイドサポート」の取り組みをスタートさせた。
オピオイドサポートの流れは、医療用麻薬の新規導入時には、外来で処方し、各外来の事務から薬剤科へ連絡。薬剤師が独自に作成した説明書を用いた服薬指導を行っている。また、医療用麻薬の継続投与時には、外来受診時の採血やレントゲン撮影後の診察までの待ち時間を利用し、看護師が患者と1回当たり約10~30分面談して問診を行い、疼痛の状態や日常生活で困ったことなどを評価シートに記載する。
その内容をもとに、薬剤師が副作用の評価や服薬指導を実施し、評価した内容を医師に報告する。薬剤師が疼痛や副作用の管理不十分と判断した場合は、医師に処方提案を行っている。面談は1日に多くて5人程度、少ない日は1人ということもあるという。
2014年11月から昨年12月までに入院時や外来で医療用麻薬が新規導入された外来患者42人を対象に、オピオイドサポートの有効性について、処方提案の内容と採用率、処方提案後の患者状態などで評価した。
その結果、処方などの提案数は102件、処方提案の採用率は77.4%(79件)と約8割に上った。提案内容を見ると、医療用麻薬についてが43%と最も多く、次いで緩下剤が26%と、これらで約7割を占めた。ただ、副作用対策や薬剤以外に関する提案も12%あり、看護師が問診に関わることによって多角的な評価が可能になったことが考えられた。
処方提案が採用された後の患者状態を見たところ、改善した患者が57%と半数を超えた。医療用麻薬について処方提案した患者では、ベースやレスキューなどを調節することで58%の改善が見られ、副作用対策としての緩下剤を提案した患者では73%の改善が得られており、薬剤師による処方提案が患者の状態改善につながったことが明らかになった。
薬剤師による事前面談の回数と診療報酬のがん性疼痛緩和指導管理料の算定率の関係を調べると、事前面談を開始した14年11月当初は、算定率が5%に満たなかったが、半年以上経過した昨年6月には10%を超え、11月には30%に達するなど急速に伸びており、病院経営にも貢献していることが分かった。
これらのことから、薬剤師と看護師が協働してオピオイドサポートを行うことにより、服薬指導だけではなく、治療方法や今後の過ごし方、不安に感じていることなど生活面での指導が可能になった。
同院薬剤科は、「看護師による生活面での指導が行われることで、薬剤師による提案も副作用対策や薬剤以外に見られるなど、多角的に評価できるようになった」としている。