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原発性骨髄線維症の病態、遺伝子改変マウスで再現-熊本大と千葉大

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2016年07月14日 PM02:00

発症メカニズムにつながるがん遺伝子発現異常も発見

千葉大学と熊本大学は7月12日、高齢者に多いがんのひとつであり、有効な治療法がない原発性骨髄線維症の病態を遺伝子改変マウスにおいて再現することに成功したと発表した。その解析から発症メカニズムにつながるがん遺伝子発現異常を発見し、がん遺伝子の発現を抑える薬剤の治療薬としての有効性を確認したとしている。この研究は、千葉大学大学院医学研究院の岩間厚志教授と熊本大学国際先端医学研究機構の指田吾郎特別招聘准教授の研究グループによるもの。論文は、米国学術誌「The Journal of Experimental Medicine」に発表された。


画像はリリースより

原発性骨髄線維症とは、骨髄の中で血小板を作る巨核球と骨髄球系細胞が腫瘍性に増殖して骨髄の線維化と造血障害を生じる血液がんで、脾臓などで異所性の造血をきたす。65歳以上の高齢者に多く、10万人あたり2人以下というまれな疾患で、平均生存期間は3年程度、主な死因は感染症、出血と白血病への移行。病気の原因として、遺伝子変異が知られ、約半数の患者でJAK2キナーゼの活性化変異が見られる。その他に共存する遺伝子変異としてエピゲノム制御因子であるEZH2やTET2遺伝子の変異が知られ、悪性度との関連が言われている。

今回、研究グループは、こうしたJAK2変異体とEZH2変異体の両方をもつ遺伝子改変マウスを作製して、同様の変異を持つ患者と同様に、悪性度の高い骨髄線維症をマウスにて再現することに成功した。

ブロモドメイン阻害剤で進行抑制

作製した骨髄線維症マウスの造血細胞を採取して、遺伝子発現およびエピゲノム変化を解析。これらの統合的な検証によって、複数のがん遺伝子候補を含めた243遺伝子の活性化を確認し、このうち患者の腫瘍細胞でも発現上昇が知られるHMGA2などを骨髄線維症のがん遺伝子として同定した。実際、HMGA2がん遺伝子を造血細胞に強制発現させると、骨髄線維症の病態の一部を再現できたとしている。

こうしたがん遺伝子の発現を抑制するため、遺伝子発現を活性化する機構を抑制するブロモドメイン阻害剤をマウスに投与したところ、骨髄線維症の進行抑制効果を確認。既に臨床応用されているJAK2キナーゼ阻害剤との併用に効果があるか注目される。

今後は、患者で認められる遺伝子変異を導入したこの骨髄線維症マウスを用いた、より詳細な発症メカニズムの解明が求められる。また、唯一の治癒的治療法の造血幹細胞移植術に適応のない高齢者患者に対して、こうしたがん遺伝子と発現メカニズムを標的とした新規治療戦略の進展と臨床応用が期待される、と研究グループは述べている。

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