理研研究チーム開発の毛包再生技術で
京セラ株式会社は7月12日、理化学研究所、株式会社オーガンテクノロジーズと共同で、再生医療分野である「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関する共同研究契約を締結したと発表した。今後、毛包器官を再生して脱毛症を治療する技術や製品の開発を共同で実施するとしている。
画像はリリースより
脱毛症については、国内1800万人の患者がいると推計。現在、育毛剤や脱毛阻害薬、自家単毛包移植術などの幅広い治療が行われているが、すべての症例に有効ではなく、自家単毛包移植術による外科的処置によっても毛包の数を増加させることはできない。
理研多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームは、これまで歯や毛包、分泌腺(唾液腺、涙腺)など幅広い種類の器官再生が機能的に可能であることを実証。2012年には、成体マウスのひげや体毛の毛包器官から、バルジ領域に存在する上皮性幹細胞と、間葉性幹細胞である毛乳頭細胞を分離し、研究チームが開発した「器官原基法」により毛包原基を再生する技術を開発した。
細胞培養技術や移植技術の確立で2020年の実用化目指す
この再生毛包原基を毛のないヌードマウスに移植すると、再生毛包へと成長し、毛幹を再生できることが明らかになっている。再生毛包原基移植による器官再生は、周囲組織である立毛筋や神経と接続すると共に、正常と同様の毛周期を繰り返すなど、機能的な器官を再生することが可能。また、色素性幹細胞を組み込むことにより毛髪の色を制御でき、再生毛包原基が再生する毛包器官の数を制御することも可能であることから、脱毛症に対する審美治療への応用可能性が示されている。
この毛包再生技術をヒトへの脱毛症治療へと展開するため、3者は共同研究を実施。細胞培養技術や移植技術の確立、移植に向けた機器開発を進め、2020年の実用化を目指すとしている。京セラは、微細加工技術や生産技術を応用し、細胞加工機器の開発などの技術開発を担当。理研、およびオーガンテクノロジーズは、毛包由来幹細胞の培養・増幅技術やヒトへの臨床応用に向けた細胞操作技術の開発、製造工程の確立、モデル動物を用いた前臨床試験などの技術開発を担当する。
毛包再生医療は、患者自身の毛包から幹細胞を採取して加工し、患者自身に移植する自家移植が中心。最も患者数が多い男性型脱毛症では、医療機関にて、少数の毛包を採取し、受託製造会社はその毛包から幹細胞を分離して、培養、増幅し、器官原基法により再生毛包原基を製造する。この再生毛包原基をパッケージして医療機関へと搬送し、医療機関において患者に再生毛包原基を移植治療することになるとしている。
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