炎症疾患に関わる2つの因子、STAT6とNF-κBを同時に抑制
アンジェスMG株式会社は7月12日、次世代の核酸医薬である「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了し、製品開発に着手すると発表した。
キメラデコイは、遺伝子の発現の制御を担う転写因子STAT6と、炎症や免疫が活性化し、活性酸素などによる酸化ストレスなどの刺激が外部から与えられた時に細胞が炎症反応や免疫反応を惹起させるため活性化する主要な転写因子NF-κBという炎症に関わる2つの重要な因子を同時に抑制する働きを持った核酸医薬。
NF-κBのみをターゲットとした従来のデコイに比べ、炎症を抑える効果が格段に高いことが期待されている。同社は、大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座の研究チームと2012年から共同研究を実施してきていた。
喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病の治療薬開発へ
喘息を対象とした動物試験の結果、従来のNF-κBデコイと比較して、呼吸機能の程度を示す気道の抵抗値を約半分に、さらに炎症に関係する体内物質の濃度を大幅に抑制できることが明らかになっている。この研究成果は、同大学大学院の研究チームによって今年5月に開催された米国遺伝子治療学会で発表された。また、キメラデコイは、NF-κBデコイと比べ生体内の安定性に優れ、かつ生産コストが低いという長所も併せ持つとしている。
キメラデコイの基盤技術開発が完了したことを受け、同社は、臨床試験の実施に必要な前臨床試験を開始する。具体的には、炎症性疾患を対象としたキメラデコイに適した製剤の開発、安全性試験などを実施。今後、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)など炎症性疾患に対する治療薬の開発を目指すとしている。なお、複数のターゲットを同時に抑制できるキメラデコイの製品開発に着手するのは世界で初めてとなる。
炎症性疾患の分野では近年、抗体医薬品が実用化されているが、効果が持続しない、薬価が高いなどの課題がある。また、有効な医薬品のない難治性の炎症性疾患も数多く存在するため、キメラデコイはこうした疾患に有効な治療法をもたらす可能性があると、同社は述べている。
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・アンジェスMG株式会社 ニュースリリース