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死亡リスクの高い希少疾患「ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症」に対する酵素補充療法とは

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2016年07月13日 PM04:00

LAL酵素が先天的に低下・欠損することで起こるLAL-D

アレクシオンファーマ株式会社は5月24日、LAL-Dの効能効果を有する遺伝子組換えヒトライソゾーム酸性リパーゼ製剤「(R)点滴静注液20mg(一般名:)」を発売。これを受け、都内で致死性の代謝性超希少疾患であるライソゾーム酸性リパーゼ欠損症(LAL-D:Lysosomal Acid Lipase Deficiency)についてのプレスセミナーが開催された。

LAL-Dは、国内患者数数十人とされている超希少疾患。遺伝子変異によってライソゾーム内のライソゾーム酸性リパーゼ(LAL)酵素が先天的に低下・欠損することで起こる。正常細胞では、コレステロールエステル(CE)とトリグリセリド(TG)はLAL酵素により加水分解され、遊離コレステロールおよび遊離脂肪酸が細胞内に放出される。しかし同疾患の場合、LAL酵素活性の低下により、血管壁や肝臓などの主要な臓器にCE/TGが蓄積し、その結果、脂質代謝に異常が生じ、肝臓をはじめとした多臓器に障害をもたらす。これまでLAL-Dに対する治療は、低脂肪食の摂取や脂質低下薬の投与、肝移植、造血幹細胞の移植などが行われていたが、こうした支持療法による改善の可能性は低いと考えられており、有効な治療法が求められていた。

今回発売されたカヌマは、LAL-Dの根本原因である酵素低下・欠損を補うためのLAL酵素補充療法。同療法により、ライソゾームでのCE/TGの加水分解機能の回復、肝脂肪量やトランスアミナーゼの減少、LDL-c、non-HDL-c、TGの低下、HDL-cの上昇、腸に蓄積した脂質の減少による成長障害の改善が期待できるという。

Wolman病とコレステロールエステル蓄積症、2つの表現型を呈するLAL-D


鳥取大学医学部付属病院 小児科の村上潤氏

LAL-Dは臨床的に、乳幼児のWolman病(WD)と、遅発型のコレステロールエステル蓄積症(CESD)、2つの表現型を呈する。WDはLAL活性が完全欠損、CESDは部分欠損である。とくにWDは、未治療の場合、生後6か月未満で死に至る、急速進行性で致死的な疾患。肝腫大および肝不全、脾腫大、持続性の嘔吐・下痢、腹部膨満などの顕著な肝・消化器症状を示す。とくに、副腎石灰化は診断的価値が高いとされている。

一方、CESDは、他の肝疾患同様、無症状のまま肝線維化から脂肪肝、肝硬変、肝不全へと重症化することが多い。症状は、肝腫大・脾腫大、一般的に肥満がない、ALTが正常値上限の1.5倍以上、LDL-c≧182mg/dl、HDL-c<50mg/dlなど。肝生検では小滴性脂肪沈着、泡沫状マクロファージが見られる。登壇した鳥取大学医学部付属病院 小児科の村上潤氏は、「CESEは、89%が12歳未満で発症、50%が21歳未満で死亡するため、小児期での発見が重要」と話す。さらに村上氏は、臨床的にLAL-Dが疑われる患者として以下を挙げた。

◆肝臓関連所見
持続性肝腫大、原因不明のトランスアミナーゼ値上昇、顕著な小滴性脂肪沈着、潜在性肝硬変、インシュリン耐性がなく、メタボリック症候群と思われる患者

◆脂質関連所見
高LDL-c値および/または低HDL-c値、家族歴が明らかでない家族性高コレステロール血症(FH)が疑われる患者、LDLR、APO 8およびPCSK9をコードする遺伝子の検査結果が陰性である、FHが疑われる患者

現在、日本におけるLAL-Dの報告は、WDが12例、CESDが13例とされているが、日本での罹患率はこれまで疫学的調査がなく全く不明だ。村上氏は、「まだ診断されていない症例が隠れている可能性があり、LAL-Dは過小評価されている可能性がある」と語った。

幅広い年齢層のLAL-D患者への有効性と安全性が示された


東京慈恵会医科大学 消化器肝臓内科の天野克之氏

続いて登壇した東京慈恵会医科大学 消化器肝臓内科の天野克之氏は、カヌマの作用機序、海外データと国際共同治験の結果を紹介した。

生後6か月で成長障害のあるLAL-D乳児患者(WD患者)9名を対象に行われた第2/3相、単一群、非盲検試験では、主要評価項目である生後12か月まで生存を6例が達成。ALT値、AST値の改善がみられた。また、3mg/kgを週1回まで増量したところ、ベースライン時から48週までに、体重増加(年齢別標準体重のパーセンタイル値 12.74%→29.83%)、リンパ節腫脹、血清アルブミン値(26.7g/L→38.7g/L)の改善も認められた。

また、小児および成人のLAL-D患者対象(CESD患者)66例に対する第3相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験では、カヌマ1mg/kgを2週に1回投与したカヌマ群は、プラセボ群と比較して、主要評価項目であるALT値の正常化について、有意な効果を示した。さらに、AST、LDL-c、HDL-cなどの脂質パラメーターも有意に改善。肝脂肪量の大幅な減少なども認められた。同試験は、現在、オープンラベル期の継続試験中である。

なお、臨床試験で認められた主な副作用は、腹痛、下痢、じんましん、発熱など。臨床試験で3%の患者に発現がみられた重篤な有害事象はアナフィラキシー様症状であり、投与の約1年後までみられる場合があったとしている。

天野氏は、「LAL-D患者は高い死亡率を示し、早期死亡のリスクを伴う。カヌマの長期酵素補充療法で、早期の死亡リスクを減らすことがおそらくできると考えられている。それだけでなく、幅広い年齢層のLAL-D患者に有効性が期待でき、安全性も示された」と、同剤に対する期待を寄せた。

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