■「製販三役」 役割に問題意識
武田氏は、急激な高齢者の増加、人口減少社会に向け、地域包括ケアシステムの推進を欠かせない課題としつつ、医療制度の持続可能性を脅かす問題として高額薬剤問題を挙げ、「非常に優れた効果を示すが、極めて高額となっている薬剤に、どう折り合いをつけていけばいいのかが大きな課題として突きつけられている」との認識を示した。
その上で、高額薬剤の適正使用を「どうしても取り組まなければならない課題」と位置づけ、高額薬剤の問題に取り組むに当たっては、「あくまでも患者が必要な治療を受けられるアクセスの確保、画期的新薬がこれからも開発されるような配慮が必要不可欠」との考えを示した。
6月に閣議決定された骨太方針では、「革新的医薬品等の使用の最適化を推進」と明記されたが、武田氏は「新しい作用機序で高い治療効果が認められる医薬品は、既存品よりも患者の選択、適切な使用の必要性は自ずと高くなるだろう」との認識を示し、「関係学会に協力を求めつつ、承認された範囲の中で最適な対象患者、その医薬品を適切に使える医師の要件を記載した使用ガイドラインを作り、周知していくことが必要」との考えを明らかにした。ガイドラインの位置づけについては、「承認条件としてのものなのか、薬価収載までに作成を求めるのかなどについては、これからの議論」とした。
中央社会保険医療協議会で「承認時から薬価や市場規模を念頭に置くべき」との意見が出ていることに対しては、「承認段階で薬価や市場規模は固まってないので、その時点で考慮するのは非常に困難と言わざるを得ない」との見解を示しつつ、「今後われわれが学会と相談して作るガイドラインを活用していけば、最適な使用につながり、ひいては医療費の適正化につながるので、中医協の議論を受け止めた形になるのでは」との考えを述べた。
また、化血研の不正製造記録の隠ぺい、ノバルティスファーマの「ディオバン」の誇大広告、副作用報告遅れなど、行政処分の事案が相次いでいることに言及。特に化血研事件を受け、国の承認書通りに製造されているか国内の製薬企業に一斉点検を求めた結果、7割の品目で承認書との違いが見られたことを問題視。「総括製造販売責任者をはじめ製造販売業三役の果たすべき役割が形骸化していないかどうか、何らかの確認が必要ではないか」と問題意識を示した。再発防止の観点から製造販売業三役の取り組むべき内容について、業界から意見を聞きたいとした。
薬局のあり方については「昨年、医薬分業への大きな議論があり、調剤報酬改定でも大きな改革があったが、本番はこれから」との認識を示し、「患者のための薬局ビジョン」、健康サポート薬局の実現が非常に大事とし、「転換期であるからこそ非常に大事な局面と受け止め、薬局ビジョンや健康サポート薬局を視野に、自分たちがどういう機能を果たしていくべきか、そのためにどういう体制を採っていくのがいいのか、これをチャンスと捉えて時代が求める地域包括ケアシステムの中にしっかり位置づけられるような薬剤師、薬局になってもらいたい」と語った。