処分行為行ったA講師は停職6か月、A講師在籍する講座のB教授は戒告処分
奈良県立医科大学は7月7日、6月に報道発表した「遺伝子組換え大腸菌の不適切処理事案」について、同日付けで関係者の懲戒処分を行ったと発表した。
処分の対象となった行為は、同大学のA講師が、遺伝子組換え大腸菌の培養液をカルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)が定める不活化処理をせずに、2013年4月から2016年3月までの3年間、平均して月に1~2回の頻度で、所属する研究部署の実験室内の実験用シンクに廃棄していたというもの。これを受けて同大学は、この行為が同大学の職員就業規則違反であるため、職員懲戒規程に則り、A講師を停職6か月、A講師が在籍している講座のB教授を戒告処分にしたとしている。
この件について、同大学は年6月15日に所管省である文部科学省研究振興局宛に報告書を提出。6月28日には、文科省より「厳重注意処分通知」を受けていた。
遺伝子組換え大腸菌、周辺環境に影響与えず
同大学の報告によると、組換え大腸菌を不活化処理せずに廃棄しているところを目撃したという情報提供が学内からあったのは、今年3月10日。これを受けて3月17日にA講師は目撃情報を認める陳述書を提出し、カルタヘナ法違反と判断。翌18日、所管省である文科省研究振興局ライフサイエンス課に第一報を入れた。以降、学内すべての組換え実験責任者56人と同従事者298人、学外を含む当該研究室在籍者26人のヒアリング調査またはアンケート調査、排水経路の下水サンプリング調査、検証実験などを実施。4月6日には文科省による現地調査を受けたとしている。
なお、当該実験用シンクから、大学構内排水路を経て公共下水道(最終処理場は奈良県第二浄化センター)に漏出した可能性のある大腸菌はK12株のうちの2種類(DH5α株とStbl3株)であることが確認されている。K12株は遺伝子組換え実験にきわめて広く使用されている大腸菌であり、O157のような病原性大腸菌とは異なり、毒素を産生せず病原性もない。これら漏出した大腸菌には、組換え実験のためにA講師が作製したプラスミドがサンプリング検査計4種類導入されていたが、いずれも病原性も伝達性も持っていない。
同大学は、排水経路上の下水で、組換え大腸菌はすべて陰性であったことを確認。最終下水処理場である奈良県第二浄化センターの塩素処理濃度で、組換え大腸菌が死滅することも検証実験で確認していることから、組換え大腸菌が自然界に生き残り周辺環境に影響することはなかったものとしている。
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