ESDと外科手術を比べ、長期予後と偶発症を検討
大阪市立大学は7月7日、一部の早期胃がん(がん細胞が粘膜層または粘膜下層までにとどまっているもの)において、内視鏡治療の長期予後が外科手術よりも優れており、偶発症も少なかったことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科消化器内科学の福永周生医員らの研究グループによるもの。研究成果は、米国の医学誌「Gastrointestinal Endoscopy」に6月27日付けでオンライン掲載されている。
画像はリリースより
これまで後ろ向き研究で患者背景を補正する解析方法を用いた検討も報告されているが、悪性度の異なるがんが含まれており、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と外科手術は差がないという結果だった。このため研究グループは、分化型で内視鏡治療の適応拡大治癒切除基準を満たす早期胃がんを対象とし、ESDを受けた患者のほうが外科手術よりも長生きしているのではないかという仮説をたて、ESDと外科手術を比較して、それらの長期予後と偶発症を検討することを目的として研究を実施した。
外科手術に代わりESDが第一選択となる根拠に
1997年から2012年の間に同院でESDまたは外科手術を受けた1,500人の早期胃がん患者のうち、分化型で内視鏡治療の適応拡大治癒切除基準を満たす早期胃がん患者はESDが224人、外科手術が133人だった。予後に影響を与えると思われる他臓器にがんを合併した患者を除き、ESD181人、外科手術127人が解析の対象となった。
5年全生存率は、ESD群が98.5%、外科手術群が91.9%で、統計学的な有意差を認めなかった。しかし、患者背景をそろえる傾向スコアマッチ法を用いると、5年全生存率はESD群が97.1%、外科手術群が85.8%と、ESD群の予後が有意に良好だった。特に並存疾患のある患者の予後が有意に良好だった。また、患者の予後に与える影響度に重み付けをして解析を行う方法(IPTW)でも、外科手術はESDよりも予後を悪くするという結果だった。さらに、偶発症の頻度もESD群が6.8%、外科手術群が28.4%と、ESDのほうが有意に低率だったとしている。
これらの結果は、今まで外科手術が標準的とされていた一部の早期胃がんの患者、特に並存疾患のある患者が内視鏡治療を受けることで、より負担が少ないだけでなく、より長生きできる可能性を示唆している。一部の分化型早期胃がんにおいては、外科手術に代わってESDが第一選択となる根拠になり得る重要な成果である、と研究グループは述べている。
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