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p62タンパク質減少で生細胞へのDNA導入効率上昇-阪大

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2016年07月08日 PM02:00

遺伝子治療でDNA細胞核導入技術の開発望まれる

大阪大学は7月6日、外来DNAを生きた細胞に効率よく導入するために、p62と呼ばれるタンパク質の量を減少させることで、DNAの導入効率を上昇させることに成功したと発表した。この研究は、同大学大学院生命機能研究科の小川英知特任准教授、平岡泰教授らが、(NICT)未来ICT研究所との共同で行ったもの。研究成果は、6月18日に国際的科学誌「FEBS Letters」オンライン速報版で公開された。


画像はリリースより

分子細胞生物学分野において、外来遺伝子を効率よく生細胞に導入する必要があるが、これまで細胞にDNAを導入する場合、その導入効率が低いことが問題になっていた。細菌感染やウイルス感染などの感染症の治療分野では、感染した細菌やウイルスのDNAが細胞内でどのように処理されるかが、長年にわたって不明のままとなっている。さらに、遺伝子治療の分野では、安全で高効率なDNAの細胞核導入技術の開発が待ち望まれている状況にあった。

生細胞への外来DNAの導入効率が低い原因は、細胞内にオートファジーと呼ばれる細胞に侵入した外敵を分解するシステムがあり、そのシステムにより導入されたDNAの大部分が核に運ばれる前に分解されてしまうこと。NICT未来ICT研究所では、微小なビーズを生細胞に導入する技術をすでに開発しており、この技術を用いて、大阪大学と共同でさまざまな動物細胞でオートファジー過程を蛍光顕微鏡で追跡することにより、生細胞への遺伝子導入効率の評価を進めてきた。

がんや高血圧、糖尿病治療への応用に期待

研究では、細胞内のp62タンパク質が異物であるDNAを捉えて速やかに分解するという極めて重要な役割を持っていることが判明し、p62タンパク質を一時的に減少させることで細胞に導入したDNAの分解を抑制でき、遺伝子導入効率を飛躍的に上昇させることに成功。これまでマウスのES(胚性幹)細胞では、DNAを導入しようとしても、その導入効率が悪いことが問題になっていた。それは、細胞にはオートファジーと呼ばれる、細胞に侵入した外敵を分解するシステムがあり、そのシステムによって導入されたDNAの大部分が分解されるからで、p62はその分解システムの一員でDNAを分解することに貢献する。p62を除去すると、そのオートファジーの機能が弱まり、DNAが壊されなくなり、その結果、遺伝子導入効率が上昇することを証明したとしている。

今回の研究成果が、細菌・ウイルス感染のメカニズムの解明や、がんや高血圧、糖尿病など特定の遺伝子治療法の開発に貢献することが期待されると、研究グループは述べている。

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