プレ調査で、旅行回数多いほど人生に「失望感」低く
東北大学は7月6日、同大学加齢医学研究所とクラブツーリズム株式会社が共同で、旅行が脳にもたらす健康作用についての共同研究を今年7月から3年間実施すると発表した。この共同研究は、脳科学分野で世界的権威である研究機関の同研究所がすすめている生涯健康脳の研究において、シニア世代に強みを持つクラブツーリズムが産学連携を組み、医学的見地から「旅行」と「認知症予防・抑制」の相関関係について本格的に調査・研究を行うもの。
プレ調査として、旅行に行く頻度と個人の主観的幸福感の関連を調べる目的で、研究グループは5月に45人の客を対象にアンケート調査を実施した。過去5年間の旅行回数について、自由記述形式で質問。また、心理学的に信頼性が確認された質問紙である「主観的幸福感尺度」にも回答してもらい、客の主観的幸福感(自分は幸せだと思う気持ち)を測定した。さらに、客がどのようなモチベーションを持って旅行に行き、そのモチベーションが主観的幸福感とどのように関連するかを調べるため、観光動機の質問紙にも答えてもらった。
過去5年間の旅行回数と主観的幸福感の関係性を調べる統計解析を行ったところ、過去5年間の旅行回数が多いほど、人生に対する「失望感」が低いという有意な結果が得られた。また、「現地交流」を動機として旅行をする傾向が高いほど、人生に対する「満足感」が高いこと、「旅行先の文化や歴史を知りたい」といった文化の見聞を旅行の動機とする傾向の高い人ほど人生で起こる困難な状況に自分で対処できるという自信を強く持っていることもわかったとしている。
3年間で90人の主観的幸福感や認知機能検証
これらの結果は、あくまで旅行回数や観光動機と主観的幸福感の「関連」を示す結果であり、旅行回数や観光動機が主観的幸福感に「影響」することを示すものではないが、頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆される結果となった。高い主観的幸福感は、長寿命や認知機能の維持に影響すると考えられており、今回のプレ調査の結果は、旅行が認知症の予防・抑制に効果的であるという可能性に期待が持てる結果であると研究グループは見ている。
今後は、「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、認知機能が保たれている。また、旅行前・旅行後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制が見られる」という仮説をもとに、3年間で約90人を対象に、さらに詳しい調査をしていく予定。
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・東北大学 プレスリリース