マイクロ波照射装置使った特殊な固定法で生体内のグリコーゲン保存
理化学研究所は7月6日、マウス脳内のグリコーゲンを正確に可視化する新しい手法を開発し、加齢に伴う脳グリコーゲンの分布変化の可視化に成功したと発表した。この研究は、理研脳科学総合研究センター神経グリア回路研究チームの平瀬肇チームリーダー、大江祐樹研究員らの共同研究グループによるもの。研究成果は、米国の科学雑誌「GLIA」オンライン版に6月29日付けで掲載された。
画像はリリースより
グリコーゲンは、最近では、通常時における脳活動のエネルギー源としてだけでなく、記憶の定着という重要な脳活動にも関わることがわかっている。しかし、脳グリコーゲンは微量で分解されやすく、従来の方法では脳グリコーゲンを保存したまま可視化できないため、正確な脳内分布は明らかにされていなかった。
共同研究グループは、従来の固定法とは全く異なる手法で脳グリコーゲンを保存する技術の開発に着手。マイクロ波照射装置を使った特殊な固定法により生体内のグリコーゲンを保存し、さらに抗グリコーゲン抗体による免疫組織染色法を用いることで、ミクロレベルからマクロレベルの脳グリコーゲンの分布を可視化することに成功した。
認知症の発症メカニズム解明に期待
その結果、グリコーゲンは脳の海馬、線条体、大脳皮質浅層、小脳分子層に多く存在し、主にグリア細胞の一種であるアストロサイトに局在することがわかったとしている。また、アストロサイト内では、細胞体よりもシナプスや血管と接する突起にグリコーゲンが多く蓄積されていること、若いマウスと老齢のマウスではグリコーゲンの分布が異なることも明らかになったとしている。
今回の成果は、今後、神経とグリア細胞の相互作用を研究する上で重要な基礎的な知見だと考えられる。また、近年指摘されている糖疾患と認知症の関連においても、今後、加齢に伴う脳グリコーゲンの分布変化とアルツハイマー病に代表される認知症との関連を調べることにより、認知症の発症メカニズムの解明に役立つと期待されると、共同研究グループは述べている。
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・理化学研究所 プレスリリース