毒性コンホマーに対する特異性より高い抗体を再探索
京都大学は7月6日、アルツハイマー病(AD)の原因物質と考えられているアミロイドβタンパク質において、神経細胞に対して毒性を持ちやすい立体構造を標的とする抗体「24B3」を開発したと発表した。この研究は、同大学農学研究科の入江一浩教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に7月4日付けで掲載されている。
画像はリリースより
ADの原因物質と考えられているAβ42は、オリゴマー化することによって神経細胞に対して毒性を示す。そのため、抗Aβオリゴマー抗体は、ADの診断・予防・治療において有望視されている。特に診断に関しては、現在行われている検査手法では過剰診断されてしまう例が報告されており、より選択的に神経毒性を持つAβオリゴマーを検出する手法の開発に注目が集まっていた。
研究グループは、Aβ42のGlu22、Asp23というアミノ酸残基付近での「毒性ターン」構造を特徴とした毒性配座理論を提唱しており、近年、Aβ42の毒性コンホマーを標的とした立体構造特異抗体「11A1」を開発。11A1は、従来抗体では認識が困難であった細胞内毒性オリゴマーを顕著に検出した一方で、毒性コンホマーをあまり形成しない野生型Aβ42の単量体およびアミロイド線維にも反応が見られたことから、この研究では毒性コンホマーに対する特異性がより高い抗体を再探索したとしている。
血液使ったAD診断に応用へ
11A1開発時に得られた7種のモノクローナル抗体の特性を評価した結果、11A1と比べて、毒性コンホマー(毒性オリゴマー)に約10倍強く結合し、野生型Aβ42の単量体にはほとんど反応しない抗体「24B3」を発見。24B3はE22P-Aβ42(毒性コンホマーに固定したAβ42)ならびに野生型Aβ42の神経細胞毒性を、数種の市販のN末端抗体よりも強く抑制することがわかった。そこで、24B3を用いてヒト脳脊髄液を解析したところ、AD患者において、毒性コンホマーを持つAβ量の全Aβ42量に対する割合が、ADではない人に比べて有意に高いことが確認された。
今回開発された24B3抗体は、AD発症に寄与すると考えられる毒性立体構造を持つAβ42に対して選択的に反応することから、AD診断の新しいツールになる可能性がある、と研究グループは述べている。今後は、24B3抗体による毒性コンホマーの検出感度を上げ、脳脊髄液ではなく血液を使ったAD診断に応用すべく、研究を進めていくとしている。
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・京都大学 研究成果