骨肉腫にもアポトーシス細胞死を抑制するたんぱく質存在
岡山大学は6月30日、腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」が骨肉腫に対する抗がん剤治療の効果を増強させる分子メカニズムを明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学病院新医療研究開発センターの田澤大助教、同大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、同整形外科学分野の尾崎敏文教授らの研究グループによるもの。研究成果は英国の科学雑誌「Scientific Reports」電子版に同日付けで公開された。
抗がん剤治療の効果を高めるためには、がん細胞内に存在する細胞死を抑制するたんぱく質の効果を弱める必要がある。細胞死を抑制するたんぱく質として、BCL2ファミリーに含まれるアポトーシス細胞死を抑制するたんぱく質BCL2、MCL1、BCL-XLなどが有名だが、骨肉腫においても、これらのたんぱく質が多く存在し、抗がん剤治療の効果を弱めることが知られている。
がん細胞内のマイクロRNA-29増やし、たんぱく質MCL1阻害
テロメライシンは、風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスのE1領域に、多くのがん細胞で活性が上昇しているテロメラーゼという酵素のプロモーターを遺伝子改変によって組込み、がん細胞内で特異的に増殖して、がん細胞を破壊することができるようにした治療用ウイルス製剤。
研究グループによると、テロメライシンの投与によって、骨肉腫細胞内に転写因子E2F1が増加。これに伴いマイクロRNA-29が誘導され、このマイクロRNA-29が細胞死を抑制するたんぱく質MCL1の効果を阻害することで、骨肉腫細胞に対する抗がん剤治療のアポトーシス細胞死の誘導効果を増強させることを証明したとしている。
今回の研究成果から、抗がん剤が効きにくい骨肉腫患者に対してもテロメライシンを投与することで抗がん剤によるアポトーシス細胞死の誘導効果が回復し、骨肉腫患者の生命予後を改善できる可能性が考えられる。今後、テロメライシンの臨床開発が進むと、抗がん剤の治療効果の増感剤として新たな治療法の開発が期待できると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース