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加齢により神経筋接合部の分子構造変化-都長寿研

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2016年07月05日 PM12:00

サルコペニアの予防・治療法の開発に期待

東京都健康長寿医療センター研究所は6月27日、老化に伴う筋力低下や筋萎縮に伴い、運動神経と骨格筋のつなぎ目の神経筋接合部の分子構造が変化することを、(誘導放出制御)超解像度顕微鏡を使い明らかにしたと発表した。この成果は、最近注目されているサルコペニア()の病態解明や予防・治療法の開発に大きく貢献するものと期待される。


画像はリリースより

この研究は、同研究所の重本和宏研究部長と米国カンザス大学医学部の西宗裕史准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版に6月20日付けで掲載された。

サルコペニアについては、近年の研究で、発症する前から運動神経と骨格筋のつなぎ目の神経筋接合部の形態が変化して、機能が低下する原因となることが報告されている。マウスを使った実験からも、高齢マウスを1か月間ほど運動させると変化した神経筋接合部の形態が若返ることが報告されており、中枢神経からの刺激だけでなく骨格筋側からのシグナルも、神経筋接合部の機能維持と活性化を担っていることが明らかにされている。神経筋接合部で運動神経の線維が骨格筋線維に接する領域にあるアクティブゾーンは、神経伝達物質のアセチルコリンを運動時に活発に放出する重要な部位で、アクティブゾーンにはさまざまな分子が存在しているが、その構造は未解明だった。

サルコペニアと認知症の因果関係解明の手がかりにも

共同研究グループは、若いマウスと高齢マウス(29か月齢)の胸鎖乳突筋を採取して神経筋接合部の神経終末のアクティブゾーンに存在する3種類の蛋白分子(Bassoon、Piccolo、PQ-VGCC(カルシウムチャネル))の構造を、STED超高解像度顕微鏡を使って解明した。それまでの光学顕微鏡では2つの点の距離が200nm以下のものは区別できなかったが、STED超高解像度顕微鏡を使うと距離が50nm以下でも2点を区別して画像を記録することが可能。

画像解析により、若いマウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白を挟んでPiccolo蛋白がサンドイッチ様に配置しており、PQ-VGCC蛋白はBassoon蛋白と共に局在することがわかった。さらに、高齢マウスのアクティブゾーンではBassoon蛋白の発現が低下もしくは消失することや、PQ-VGCCも発現が低下することが明らかになったとしている。

今回の研究成果により、神経筋接合部のアクティブゾーンの分子構造が、加齢により変化することを世界で最初に発見したことになる。アクティブゾーンは脳内の中枢神経細胞の神経伝達部位にもあることから、今後、サルコペニアと認知症の因果関係を解明する重要な手がかりとなることが期待される。

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